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ワクチン接種予約を自治会、大学生がお手伝い

ワクチン接種予約を自治会、大学生がお手伝い

 東京都八王子市の館ヶ丘団地(約2000世帯)では、新型コロナウイルスのワクチン接種予約ができない高齢者を対象に、団地自治会や近隣の大学生らが中心となって予約のお手伝いをした。同市では、予約の受付を4月5日から開始したが、行政だけで対応できるか心配になった、と支援した自治会事務局長の塚田賢一さんは話す。

 実際、市民からは「予約センターに電話してもつながらない」という状況が出現。館ヶ丘団地の住人は、平均年齢が81歳。女性が多く、約6割が独居。スマホが使えない人も多く、パソコンやスマホを持っている人に手伝って欲しいという声に応えた。中には、相談相手もいないので、接種をあきらめようと思った、という人もいたそうだ。

 予約が始まった直後には、団地自治会メンバーによる「ちょこっと生活応援隊」16人の方々と、拓殖大学の藍澤研究室の大学生らが、自治会の「団地の縁側」に集まった。スマホに慣れた大学生が要領よく対応し、5月7日時点で、106人の予約をとった。その後も支援を続け、現在は2回目の接種予約のお手伝いをしているそうだ。

 こうした地域の助け合いがどうして可能になったのか。八王子市第1層生活支援コーディネーターを務める今泉靖徳さん(八王子保健生活協同組合勤務。写真左から二人目)に聞いた。

今泉さんの話
 「2011年、八王子市が東京都高齢者見守り窓口設置事業を活用して『八王子市シルバーふらっと相談室館ヶ丘』を団地に開設して、私が担当した。当時は、館ヶ丘団地問題と言われたほど、高齢化、隣人トラブル、認知症に起因するトラブルなど、様々な問題が起き、団地の活力も失われていた。当時、様々な相談を受けたが、ある時、私は「おむすび計画」(*1)なるものを思い付いた。

 近隣には法政大学と拓殖大学があり、その大学生に呼びかけて、ここでおむすび(おにぎりでなく)を作り、お昼ご飯を皆で食べるというものだった。思ったよりたくさんの学生が集まった。その後も、団地内の大型スーパーが無くなった時に、主婦らが立ち上がり、この相談室でおむすびを作り、お弁当を団地に配った(*2)。今、この主婦たちは、空き店舗を借りて、「たてキッチンさくら」という地域食堂を始めている。人と人を結ぶ、まさにお“むすび”活動が花を開いてきた。

 『ふらっと相談室』には、開設当時からカフェスペース“ふらっとカフェ”があった。コロナウイルスが発生する前までは、毎年、年間1万人以上の来店者があった。そして、2014年には、空き店舗だった場所に自治会が事務所を構えて、お茶を飲んでくつろげるスペース(団地の縁側)を作った。今では、住民が気軽に立ち寄れる場になっている。隣の『ふらっと相談室』とは定休日をずらす等の連携をとって営業している。心配な人は相談室に繋げ、住民自らも、“心配な人がいるよ”と職員にこっそり教えてくれたりする。穏やかな繋がりができていると思う。

 こうした地域の連携が作られてきた土台があって、今回のワクチン接種のお手伝いに繋がったのだと私は思っている。行政が主導するのではなく、今では住民が主体になって動いている。あたり前と言えば当たり前のことだけれど。

 先日、コロナを心配する卒業生たちから、たくさんのメールをもらった。ニュースを見ていて、高齢者にはネット予約は難しいと思ったので、とても誇らしかったと書いてあった。その女子は小学生の時におむすび計画に参加して、今は18歳になっている。コロナ禍で絆が薄れている中、『館ヶ丘コミュニティは健在ですね』と書いたメールもあった。卒業して離れていても、繋がりは続いている。地域のコミュニティ形成が今回のコロナ禍でのお手伝いに繋がったと思う」。

*(1)おむすび計画
2014年~17年に実施。
 学生ボランティア中心のグループは、高齢者の戸別訪問による熱中症注意喚起と実態把握アンケート、夏祭りの応援などを行った。住民(主に主婦)は、おむすび計画に参加するボランティアの昼食作り。その他住民の役割は、お米の寄付(1回のおむすび計画で150~250kg程のお米が集まる)、イベントのお手伝い、特技を生かした講座・講演・教室。木工教室、館ヶ丘に飛来する野鳥の話、自らの戦争体験を語り伝える「戦争の話を聞こう」会などが開かれた。

*(2)スーパー閉店による買物困難者に向けた「食を通じた支援」
16年に実施。  
 スーパーの閉店に伴って、食の確保に困る住民が多く出ることが想定され、住民有志と「ふらっと相談室」が協働で、週3回の「ふらっとカフェ」(ふらっと相談室内)でお弁当を作り、1食あたり250円程度で販売した。「ふらっと相談室」の住民情報から、お弁当を買いに来れない住民も多くいることがわかっていたので、そのような住民には配達も行った。開催1回あたり約50食作り、うち20食は、住民と、授業の合間に手伝いに来てくれた学生が協力して配達した。

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