ニュース

厚労省 登録有料老人ホームの基準案 提示

 厚生労働省は9月18日、「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」(座長=駒村康平・慶應義塾大学経済学部教授)を開き、6月に成立した改正老人福祉法に基づく「登録有料老人ホーム」の対象範囲や登録基準の具体案を提示した。「囲い込み」対策として、併設・関連事業所の利用を入居要件とする行為などを「不当な条件」として法令で禁じる方針を明記。夜間・緊急時の人員基準については外部連携を含む「オンコール体制」を最低基準として実質緩和する案も盛り込まれたが、入居者の安全確保をめぐり委員の見解が対立した。

中重度未満で「認知症・医療ニーズ」受入れも対象に

 厚生労働省が示した登録有料老人ホームの対象範囲について、これまでの「中重度者を入居対象とするホーム」に加え、要介護者であって「認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上」または「重度の医療ニーズ・一定の医療行為を要する者」(「特掲診療料の施設基準」別表第7・8該当者を想定)を受け入れるホームも対象とする案を示した。要介護1、2など中重度には至らないものの、一定の認知症症状や医療的ケアを必要とする高齢者を受け入れる有料老人ホームについても、新たに登録制の対象へ含める考えだ。

 これに対し、日本医師会の江澤和彦常任理事は、別表7・8該当者について、「『要介護者であって』の文言は削除すべき」と主張。「要介護認定をあえて申請させず、医療保険による過剰な訪問看護を利用させるなどの制度の抜け道になりかねない」と指摘した。

 登録ホームの判断基準は、現入居者がこれらの状態に該当しているかどうかではなく、「入居要件(受け入れ方針)」を基準とするため、既存の有老ホームの大半が登録制の対象となる見通しだ。

「囲い込み」対策広範に基準化

 登録基準は、現行の「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」をベースとしつつ、特定施設入居者生活介護やサービス付き高齢者向け住宅との整合性を図る方針だ。「囲い込み」対策については、契約時の遵守事項にとどまらず、運営基準上にも位置付ける。

 基準案のポイントは次の通り。
契約基準
 併設・関連事業所の利用を入居条件とすることや、かかりつけ医・ケアマネジャーの変更強要、特定事業所利用を前提とした家賃減免などを「不当な条件」として禁止する。ただし、過疎地域などで利用可能な事業所が限定されるといった場合は「不当な条件」に当たらない。

人員基準
 管理者・生活相談員を1人以上配置し、業務に支障がない場合は施設内外での兼務を認める。日中帯はホーム職員の原則常駐を義務付ける一方、夜間・緊急時に関しては、外部連携を含む「オンコール体制」を法令上の最低基準として容認する。現行の指針が求める「入居者の実態に即し、夜間の介護・緊急時に対応できる職員配置」からの実質的な緩和となる。

設備基準
 居室面積は、現行指針と同じ「原則個室で13平方メートル以上」を自治体の参酌基準として踏襲し、既存建物の転用などに係る特例措置についても現行のまま維持する。

運営基準
 次期改正で新設される「登録施設介護支援」事業者からの求めに応じた利用状況などの適切な情報提供や、入居契約とケアマネジメント契約の独立性を担保する措置(手順書・ガイドラインの策定、重要事項説明書での明示、管理者研修、相談窓口の設置など)を位置付ける。さらに、有老ホーム事業と介護サービス等関連事業の会計区分の明確化や、入居者紹介事業者への不適切な手数料設定の禁止なども盛り込まれた。

今秋とりまとめ年内に政省令

 検討会では、事業者団体から夜間帯の人員体制について柔軟な運用を評価する意見が出た一方、有識者からは安全性確保を巡る慎重論も示された。全国有料老人ホーム協会の平川健二理事長は、「管理者や生活相談員の配置を必須とする一方、介護・看護職員は提供実態に応じた配置とし、夜間もオンコール対応を許容するなど、必要な安全性を担保しつつ画一的な規制を避けた配慮と受け止めている。現場の深刻な人材不足を踏まえ、この方向性を堅持してほしい」と評価した。他の事業者団体の多くも賛同した。

 一方、日本社会事業大学専門職大学院の井上由起子教授は「有料老人ホームというからには、入居者や家族は夜間も建物内に誰かがいると思っている。火災や災害時には入居者自身からの通報を前提としたオンコールでは対応できないこともある。介護保険サービスとの連携や宿直などを含め、少なくとも建物内への夜間職員配置を求めることが必要ではないか」と指摘した。また、日本医師会・江澤委員は「オンコール体制は外部委託を認めず、ホーム職員で対応すべき」と主張した。

 群馬県の鳥塚里香代理人は、同県の指導指針が夜間でも要介護者25人ごとに1人以上の職員配置を求めている実態に触れ、「オンコール体制を敷く施設はほぼなく、外部通報装置の設置も確認していない」と指摘。その上で、通報装置の設置に代えて必要な夜勤職員を配置することは基準を上回る対応として容認されるかを質した。これに対し、事務局は基準案が夜間等の人員配置に代えてオンコール対応を認める趣旨であると説明し、「夜間に職員を常駐させるのであれば、(基準を)上回る対応になると考えている」と回答した。

 厚労省は今秋をめどに検討会の議論を取りまとめ、年内にも政省令を公布して正式な基準を示す方針だ。

(シルバー産業新聞2026年10月10日号)

関連する記事

251216_ケアマネ過去問バナー_b
シルバー産業新聞 電子版 シルバー産業新聞 お申込みはこちら

お知らせ

もっと見る

週間ランキング

おすすめ記事

人気のジャンル