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歩行から始まるADL維持向上 21年度改定・アウトカム評価を加速

歩行から始まるADL維持向上 21年度改定・アウトカム評価を加速

 2021年度介護報酬改定でアウトカム評価を強化した新たな「ADL維持等加算」が、対象サービスを拡充させて始まる。自立支援介護のデータベース「CHASE」へのデータ提供を前提とし、ADLに着目した評価指標のバーセルインデックス(BI)を活用する。注目はBIが「歩行」「移乗」項目を重点的に評価すること。装具や歩行器、車いすの使用でも所定の点数が認められるため、身体能力の向上と合わせて、適切な福祉用具活用も必要となる。また、リハビリ職の配置のないサービスが法人や事業所の枠を超えたリハ連携を図る「生活機能向上連携加算」についても、自治体が関与して連携がとりやすい仕組みに改善する。

加算取得率向上のための要件緩和

 現行のADL維持等加算は、18年度改定で通所介護(地域密着型含む)に限定して創設され、ADLに着目したアウトカム評価を導入した自立支援介護の先取りとして注目された。

 ただ、手間の割に加算が少ないことや、要件に該当する利用者がいない等の理由で、取得状況は20年4月時点で2.38%と低い。

 21年改定では、この取得を高めるために現行の厳しい要件を大幅緩和をする。

 対象サービスに認知症対応型通所介護、特定施設や特養(地域密着型を含む)も追加する(表1)。報酬評価もADL改善などを評価するアウトカム評価を一層進める。

あらゆるサービスにリハビリの視点を

 生活機能向上連携加算はリハビリ専門職がいない訪問介護、定期巡回・随時対応型、小規模多機能などの在宅サービスでも、地域の訪問・通所リハビリ事業所等と連携し、リハビリ職が関与する機会を増やすことを目指した加算。

 ただ、事業所ベースの通所介護の加算取得率は極めて低調で通所介護(生活機能向上連携加算Ⅰ)1.2%(同Ⅱ)3.9%(19年3月サービス提供分)などいずれの類型でも低い。

 これを受け、21年度改定では、リハビリ職を送り出す医療機関の情報を都道府県や保険者がリスト化し、双方の調整を図る。

 介護事業者にとって、医療機関と法人の枠を超えて連携がとりやすくなり、特に、事前に謝礼額など条件面を確認した上で依頼できるので、連携のハードルを下げる効果が期待できる。

 また、同加算について、通所介護では認められていなかったテレビ電話での連携などICTを使った遠隔で支援する方法も認める。あらゆる介護サービスにリハビリ的視点が働きやすくなることで、介護にもADLに着目した自立支援のためのサービス提供が図られるようになる。

「BI」を意識した福祉用具活用

 ADL維持等加算やリハビリ職の関与が進めば、ADL向上を意識した介護サービスの提供が期待できる。

 主な指標である「BI」は10項目のADL項目について100点満点で評価するもの。介護職にも、利用者にもわかりやすいのが特長。点数配分は「移乗」「歩行」の両項目に15点ずつが割り振られるなど、離床や歩行に関する評価が高い。「立位と歩行」がしっかりできれば、ほかの項目も向上する傾向があるためだ。

 福祉用具の使用も認められる。例えば歩行では「補装具を使用した45m歩行」は15点、「歩行器を使用して45m歩行」は10点、「車いすを使用した45m歩行(移動)」でも5点が認められる。(表2)

用具にできること

 福祉用具活用によるADL向上も求められるため、メーカー各社ともADL向上のための福祉用具を強化している。

 徳武産業(香川県さぬき市、西尾聖子社長)では、装具使用者や難病者用のシューズや、安心安全な歩行ができるケアシューズなど幅広い商品展開を図る。脱ぎ履きしやすい形状の靴を使うことで「着替え」項目の介助なしの10点を目指しやすくなる。

 歩行器は「歩行」の10点(を狙うことだけでなく、移動範囲が拡大することにより、その他のADL項目の向上が狙える。島製作所(大阪市、島義弘社長)では、男性でも使いやすい高さ90~99cmの「テノールEVO」を展開。操作しやすいU字ハンドルを採用するほか、足元の安全を確保する取り外し可能なセイフティーライトも搭載する。

 星光医療器製作所(大阪府東大阪市、平岡晋輔社長)では、自宅での移動時に役立つ物置トレイ付きの、コンパクトで安定感の高い前腕支持型歩行器「アルコフィット」や、サイズとキャスター機能の組み合わせで9タイプから選べる「アルコー10型」等を展開する。

 竹虎(横浜市、飯島幹夫社長)は、同社定番機種の「ハッピーミニ」に、急加速を抑える機能を追加した歩行車「ハッピーミニ抑速ブレーキ」を新たに発売。ADLを高めつつ、転倒防止などの安全性にも配慮する。「リハビリ支援シューズⅡ」「ヒューゴステッキ」など、歩行支援用具のラインナップを取り揃える。

 離床・移乗に関しても、プラッツ(福岡県大野城市、城雅宏社長)のベッド用グリップ「ニーパロ」シリーズは、膝を支点に移乗・立ち上がりができる柔らかいパッドのつたベッド付属品を展開。介助がなければ膝折れを起こす人でも、自身の力を最大限に使って移乗等動作ができるようになる。

 矢崎化工(静岡市、矢崎敦彦社長)の「ひざたっち」シリーズは、膝を支点に立ち上がりができる据置手すり。介護施設向けにターンテーブル付きもあり、腰を浮かせる動作を保持できる利用者であれば、介助者は軽い力で回転させられるなど、介助者の腰痛予防や身体的負担の側面でも注目される。

(シルバー産業新聞2021年1月10日号)

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