ニュース

短期連載 生産性を数値化するアメーバ経営3(実践編) 週休3日制で残業・離職減

短期連載 生産性を数値化するアメーバ経営3(実践編)  週休3日制で残業・離職減

 京セラコミュニケーションシステム(京都市、黒瀬善仁社長)が提供する医療・介護法人向け「アメーバ経営コンサルティング」の実践編(2回目)。栃木県で特養や通所介護などを運営する社会福祉法人幸知会(上三川町)はアメーバ経営の考え方を基に「週休3日制」制度など独自の取組を行う。特養では直近2年間で離職・残業ゼロを継続。職員の時間に対するコスト意識が高い。

タイムマネジメントから生産性向上に

 アメーバ経営は組織を役割・責任に応じた小さな部門(アメーバ)に分け、部門ごとに課題を可視化し、役職問わず全員で改善を目指す経営手法。指標の一つとして、月ごとの収入から人件費を除く支出を引いた額(差引収益)を求め、これを総労働時間で割った「時間当り付加価値」を用いるのが特長だ。

 幸知会は1995年に設立。特養(ショート)、通所介護、居宅介護支援が併設する「トータスホーム」をはじめ、事業所内保育「トータスキッズ」や放課後等デイサービス「トータスジュニア」など、保育や障害分野も広く手がける。

 2014年にアメーバ経営コンサルティングの利用を開始。「時間当り付加価値」を事業所ごとに算出し、生産性を可視化することで日々の顧客獲得やコスト意識が全職員に浸透するようになったという。

 角田竜司事務長は「特に着目したのが『総労働時間』。以前は残業が当たり前の雰囲気だったが、時間当り付加価値を低下させる直接的な要因になる」と説明。サービスの質を落とさず、切り詰められる時間の見直しにつながったと話す。「例えば、漫然と長時間行っていた全体レク。個別または小集団の機能訓練に切り替えたことで、時間短縮に加えて利用者のADL維持・向上にも貢献できた」。

 一つの事業所が定時終業すれば、併設事業所も「時間内に相談業務を終わらせよう」と行動変容に。拠点内での相互作用もうまく働いていると角田氏は述べる。

 売上に関しても、単に利用者獲得をうたうのではなく、「あと2人定員が埋まれば時間当り付加価値3000円を達成」といった具体的な目標を設定しやすいのもアメーバ経営ならではだと同氏。サービス提供体制強化加算の獲得を動機に、特養・通所のほぼ全介護職員が介護福祉士を取得するにも至った。

 コストに関しては「日用品」「リネン」「娯楽」などを担当分けし、発注や在庫管理を一任。車両担当は車検費用や、都度のガソリン代も把握する。「数字を身近に感じ、自分たちの行動で変化することを実感できている」(同氏)。

理念を共有 リーダー育成に寄与

 アメーバ経営を始めるにあたり、最も大切にしたのが「京セラフィロソフィ」の共有。「人間として何が正しいのか」を判断基準とした経営、業務運営を行う重要性を説く。「何のために、という根幹を失わないこと。数字を追うだけでは継続的、長期的な成長がなく、現場もついてこない」と角田氏は強調する。

 幸知会ではフィロソフィをまとめた冊子が全事業所に。会議での読み合わせ、フィロソフィの各項目に対し感想を共有するなど、事業所ごとに活用の工夫をはかる。

 「理念」と「数字」の両輪はリーダー育成にも。アメーバ経営導入8年で7事業所から20事業所まで拡大した。「他事業所の時間当り付加価値も常時チェックできるので、良い競争が働いている」(同氏)。

10時間・週4勤務 特養のシフト好循環に

 18年からは「10時間・週4日勤務(週休3日)」の勤務体系を新たに開始。現在、特養、居宅介護支援、グループホームは全職員が利用し、働きやすさの点で大変好評だ。

 同法人本部長の山口昭夫氏は「特養だと、これまでの7~16時勤務が7~18時勤務に。その結果、最も忙しい16~18時の人員を手厚くすることができた」と説明。残務時間を確保でき、残業は年々減少したと話す。角田氏も「1日で同じ職員が関わる時間が増えた。利用者にもメリットが大きい」と述べる。

 直近2年の離職者はゼロ。有給取得率は75%。こうした取組が地域にも広まり、若い介護人材の獲得増に好影響を与えている。
(シルバー産業新聞2022年12月10日号)

関連する記事