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安全な移動を支援するスロープ 貸与件数12年で2.8倍

安全な移動を支援するスロープ 貸与件数12年で2.8倍

 安全かつ負担が少なく段差を上り下りするためのアイテムであるスロープ。介護保険福祉用具貸与の給付対象であり、中重度者の増加に比例し利用件数を伸ばしてきた。小段差に対応する固定用スロープは選択制の導入以降、販売への移行に伴い貸与件数が減少している。給付データ、および主要メーカー2社の最新製品を紹介する。

 福祉用具におけるスロープは、車いすや歩行器などでの移動時に段差を解消し、円滑な通行、転倒防止を助ける。介護保険福祉用具貸与種目の一つ。「取付に際し工事を伴わないもの」が対象となる。

 スロープは可搬形と固定用に分けられる。可搬形は玄関での乗入れ、外出先などでの使用を想定し、高段差まで対応が可能。設置.介助が安定した一枚板の折りたたみタイプと、軽量・持ち運びやすいセパレートタイプがある。

 なお適切なスロープの長さは、使用方法によって段差の4〜12倍が目安。例えば健常な人が車いす介助を行う場合、傾斜角度は10度以下とし、20cmの段差だと120cm以上のスロープが必要となる。

 これに対し、固定用は主に15cm以下の小段差に対応したもの。主に敷居や上がり框などに設置し使用する。

選択制導入で固定用は貸与減

 厚生労働省の介護給付費実態統計によると、2026年1月審査分でスロープの貸与件数は47.9万件、貸与全体に占める割合は約4%。高齢者増や車いす、歩行器の利用増などを背景に12年間で2.8倍に伸びている。ただし直近3年間だけで見ると7.6%の減少(グラフ)。24年度から始まった選択制の影響が大きい。

 選択制は、利用者の状態や意向、医学的見地などを踏まえ、貸与か販売かを選択する制度。①歩行車以外の歩行器②固定用スロープ③松葉づえを除く歩行補助つえ――が対象となる。

 可搬形に比べて安価な固定用スロープは、屋内の必要な場所に常時設置し1人の利用者が複数利用しているケースも多い。重度化による商品の変更もあまりないことから、他の選択制対象種目に比べて販売への移行が進みやすい。

 厚労省の介護報酬改定検証調査「一部の福祉用具の貸与と販売の選択制の導入調査研究事業」によると、24年度の1年間で販売を選択した利用者の割合は、固定用スロープが最も高く15.2%、歩行器1.6%、単点杖5.5%、多点杖9.5%との結果だった。

 給付データに戻ると、スロープの単位数は直近3年間で3.4%減で件数ほどの減少幅は見られず。1件あたり単位数で比較しても、23年度の236単位から247単位へ増加している。販売への移行が進み、貸与に占める固定用スロープの割合が減っていることがみてとれる。

幅狭・軽量・レンタルの取扱いやすさ

 5月現在、テクノエイド協会に登録されているスロープは572商品(うち固定用スロープ253)。他の用具と比べて一見シンプルな構造だが、さまざまな住宅環境に適応した取り回しやすさで各メーカーがしのぎを削っている。12年に日本家屋の狭い間口に対応した70cm幅「ケアスロープ」を開発、「幅狭ブーム」の火付け役となったケアメディックスは、24年に「ケアスロープUL」を発売。スロープ幅はさらに狭い68.4cmとした。

 重量がかさむ長尺スロープの取扱いにくさを改善する業界最軽量タイプ。本体側面のチャンネル部分の素材をアルミからCFRP(炭素繊維で補強・強化されたプラスチック)に変更した。これにより最長285cmで重量約10kgを実現。従来のケアスロープから約5kgの軽量化に成功した。

 従来品と同じくスロープ内部には芯材が入り、車いす使用時のたわみや歩行時のへこみも最少に。耐久性などはJIS基準に準拠する。貸与事業所には補修用の純正パーツを提供し、メンテナンス方法も開示。貸与サービスの効率化を支援する。パーツの一部はケアスロープと共通で使用できる。

 同社では高段差、スロープを真っすぐ渡せない、水平ではない、などスロープ単体では設置困難とされる場所にも対応できる各種オプションを揃える。昨年発売の「斜め上がり框補正台」もその一つ。玄関の間口と上がり框が平行ではなく、かつ斜めにスロープを渡すスペースがない場合に、短いスロープと補正台のパーツを用いて本体スロープの上端を延ばすことができる。各種ケアスロープと補正台との組み合わせで貸与マークを取得。「ケアスロープK」としてレンタルできる。

 ダンロップホームプロダクツは6月に6年ぶりの新製品「DUNLOPスロープ」を発売。従来品「ダンスロープエアー2」同様、段差高さに合わせて7サイズを展開する。

 ファイバー強化樹脂(FRP)を採用した本体パネルは、24年に共同開発契約を結んだ東レの技術による一体成型構造とし、耐久性を向上。従来品は中空だったパネルの内部構造を、芯材を組み込んだ構造へと見直し、使用時のたわみを抑えて車いすの走行安定性を高め、介助者の操作性向上にもつなげている。また、端部ゴムの形状も見直して段差を低くし、乗り上げ時の衝撃を低減させた。

 狭い間口でも使いやすいよう、全幅は従来品よりさらに1cm以上短い68cmに。折りたたみ時はパネル同士が噛み合う形状で、収納時の厚みは従来の10.8cmから9.5cmへと薄くなり、保管時の省スペース化も実現した。

 さらに、スロープの上下端を同じ形状にしたことで、設置時に向きを変えるための持ち替えなどの手間が省け、上下の掛け違いによる事故も防ぐ。従来品同様に各部の補修もしやすく、貸与事業所でのメンテナンス性も高い。
(シルバー産業新聞2026年6月10日号)

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