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介護データ「CHASE」収集項目取りまとめ

介護データ「CHASE」収集項目取りまとめ

 厚生労働省は7月16日に「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」の取りまとめを公表した。介護に関するサービス・状態等を収集するデータベース「CHASE」の2020年度の本格運用に向けた収集項目を整理した。

20 年度本格運用、 アウトカム評価の基礎に

総論/認知症/口腔/栄養の4分野で
 ①総論②認知症③口腔④栄養――の4分野それぞれで、可能な限り多くの事業所が収集する「基本的な項目」、加算算定に必要となる「目的に応じた項目」、任意に収集する「その他の項目」の3段階に分け、「基本的な項目」は全分野あわせて30項目となった。
 同検討会では介護サービスにおけるエビデンスを蓄積・活用するための科学的な検証方法をこれまで議論してきた。サービスの質の見える化と介護報酬上の評価、そして個々の利用者が多様なサービスを比較・選択するための支援につなげることがねらいだ。
 今回示された「CHASE」初期仕様で収集する項目は①信頼性・妥当性があり科学的測定が可能②データの収集に新たな負荷がかからない③国際的に比較が可能――の視点に基づき整理。特に②に関しては、現場の負担に十分配慮することが再三指摘され、中間とりまとめの約250項目から、可能な限り多くの事業所が収集する「基本的な項目」は30項目に絞り込まれた()。
CHASE 初期仕様で収集する「基本項目」

CHASE 初期仕様で収集する「基本項目」

BIでADL項目を収集

 「総論」の基本的な項目は11項目。既往歴と服薬情報については、将来的にレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)等と連結すれば情報の取得が行いやすくなる。
 ADLについてはバーセルインデックス(BI)を採用。介護報酬の「ADL維持等加算」の指標にも用いられ、国際的にも確立していることから「科学的検証に妥当な収集項目である最低限のアセスメントツール」とされた。BIは▽食事▽車いすからベッドへの移動▽トイレ動作――など10項目を主に「自立」「一部介助」「全介助」で評価・点数化するもの。ADLが高いほど点数が高く、全て自立で100点満点となる。
 一方、介護現場では既に幾つかの異なるADLのアセスメント方式が用いられている現状を踏まえ、各方式で入力した項目の共通化・統合・読み替え等の継続も必要であることも明記された。
 次に、「認知症」は既往歴等に加え、DBD13(認知症行動障害尺度)とVitality Indexの2指標を基本的な項目とした。DBD13は「同じことを何度も何度も聞く」「よく物をなくしたり、置き場所を間違えたり、隠したりしている」「日常的な物事に関心を示さない」など13項目について「全くない」(0点)から「常にある」(4点)まで1点刻みの5段階評価を行うもの。また、Vitailty Indexは意欲の指標で▽起床▽意思疎通▽食事▽排泄▽リハビリ・活動――の5項目についての関心度や主体性を測る。
 「口腔」は食事の形態、誤嚥性肺炎の既往歴(新規発症含む)の2項目。食形態については、事業所間で異なっている分類方法が用いられていることや、同じ分類名で実際の食形態が異なっていること等があるため、例えば食形態を写真や絵を用いて示すなどのガイドラインや、研修の実施も今後の検討にあげた。
 「栄養」は最も多い14項目。ただ、身長・体重に関しては、車いすや寝たきりの重度者、円背や拘縮があり測定が困難な人もいるため「計測が容易にできる場合のみ」とした。栄養摂取量は、入力負担の軽減から給食データと連携による自動取得を推奨。また、数値データ以外で、食事中の摂食・嚥下状況や食欲・食事の満足感など、食事中の観察項目を盛り込んだのも特徴の一つだ。
 同取りまとめでは今後の方向性として、「状態」項目だけでなく「介入」項目の収集の必要性を指摘。WHOが策定している医療・介護行為の標準フォーマット「ICHI」等をもとに可能な項目を検討していく。
 その一方で、生活全体を支える介護の視点として、単なる身体機能の向上だけでなく、幸福感や人生の満足感を踏まえた項目をCHASEにどう取り込んでいくかについても、検討を進めていくとした。

検討会委員の産業医科大学教授・松田晋哉氏に聞く

松田晋哉 氏

「まずは加算の効果検証、リスク予防に」

 CHASE運用は、可能な限り既存のデータを活用し、現場の負担を減らすかが重要。「総論」は、基本的にルーティーンの記録・請求業務で取得できる情報に絞り込んだ。
 BIは、版権が無料であることも採用した理由の一つ。利用料がかかっては普及が進まない。BIもそうだが、一つのシートを複数の職員・職種が入力することも想定される。誰が入力しても評価結果にバラつきが出ないよう、マニュアルは必要になるだろう。
 既存データの活用で言えば、取りまとめの今後の検討でも示されたが、自治体が行う日常生活圏域ニーズ調査の項目との整合性を図っていくべきだと考える。自治体と共有することで、利用者個々だけでなく地域単位での検証に活用することができる。
 CHASEの第1 段階としてまず分析できることは、介護報酬上で自立支援・重度化防止等に資する加算が、実際にアウトカムにつながっているかどうか。例えば、口腔衛生管理加算を算定している利用者(事業所)は、算定していない利用者と比べて本当に誤嚥性肺炎が少ないか、といった比較が可能となる。また、同じ算定事業所でもプロセスの違いで利用者の状態変化が異なれば、より結果が出るプロセスへと算定要件を見直す材料となる。算定・未算定で結果が変わらなければ、加算の廃止も選択肢の一つとなるだろう。
 重要なのは、評価で終わるのではなく、分析結果を事業所へフィードバックし業務改善につなげることだ。特に、要介護度が悪化する原因は転倒(骨折)・肺炎・褥瘡といった医療的なイベントが大半。これらのリスク予防へケア技術・体制の向上に生かしてもらいたい。
 また、今後検討される「介入」項目は、ICHIに沿った内容でよいかと思う。まだ日本語版が作られていないので国の対応が待たれる。介護報酬ではリハビリテーションマネジメント加算(Ⅳ)の算定に必要な様式「VISIT」で、リハビリの介入項目は収集可能。先行して検証できる部分だ。

(シルバー産業新聞2019年8月10日号)

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