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18年改正 軽度者への給付・負担 年内取りまとめ

18年改正 軽度者への給付・負担 年内取りまとめ

 厚生労働省は2月17日、社会保障審議会介護保険部会(部会長=遠藤久夫・学習院大学教授)を開き、次期介護保険制度改正に向けた議論を開始した。見直しの争点は、政府の「骨太の方針」に明記された軽度者への給付のあり方や負担のあり方について。財務省からは、要支援1~要介護2までの給付を大幅に抑制する案や、一律2割負担の導入などが提起されているだけに、利用者の生活や事業者の経営に大きな影響を及ぼす見直しになる可能性がある。議論は年内をめどにとりまとめ、法改正が必要な見直しについては、来年の通常国会に法案を提出する予定だ。同部会は、前回の15年改正の議論からおよそ2年ぶりの開催となった。

 冒頭、厚生労働省の三浦公嗣老健局長は、「人口構造が大きく変化していく中で、地域の実情に沿ったサービスの推進と、制度の持続可能性の確保が重要」と強調。昨年6月に閣議決定された「骨太の方針」や「経済財政アクションプログラム(工程表)」において、様々な指摘がなされている点に触れ、「状況に対応するため、忌憚のないご議論を行っていただきたい」と要望した。

地域包括ケアシステムの推進と介護保険制度の持続可能性確保の2本柱で

①地域包括ケアシステムの推進では、地域の実情に応じたサービス提供を推進していくために、保険者機能の強化が重要だと説明。要介護認定率や一人あたりの介護費用などのデータ分析を行った上で、保険者が適切なサービス提供体制の整備を行えるようにする方策などを検討する。

 さらに保険者のケアマネジメントの関与のあり方も検討事項にあげ、自立支援に資する適切なケアマネジメントを行う上で重要だと説明した。

 この他、大きな柱としては、▽医療と介護の連携▽地域支援事業・介護予防の推進▽サービス内容の見直しや人材の確保――などが、検討項目として位置付けられている。

 ②介護保険制度の持続可能性の確保については、政府の「骨太の方針」にも明記された「給付のあり方」と「負担のあり方」の2つを検討。

 「給付のあり方」については「軽度者の支援のあり方」「福祉用具・住宅改修」の2つが個別の検討項目に位置付けられた。財務省からは具体的に▽軽度者(要支援1~要介護2)のサービスを地域支援事業に移行▽軽度者(要支援1~要介護2)の福祉用具貸与・住宅改修・生活援助サービスを「原則自己負担(一部補助)」――など、給付を大幅に抑制する案が提起されているだけに、この日の部会では多くの委員から給付のあり方について意見が上がった。
 日本医師会の鈴木邦彦常任理事は「軽度者だといって安易に切り捨てては、認知症や中重度の保険にならざるを得ない。自立支援、介護の社会化といった介護保険の理念を維持していくべきだ」と指摘。高齢社会をよくする女性の会の井上由美子理事は「地域支援事業の効果も出ないうちに実施するのは時期尚早ではないか」と述べた。

 また、認知症の人と家族の会の花俣ふみ代常任理事からは、「財務省は、軽度者の範囲を要支援1から要介護2としているが、軽度者とはどこまでを指すのか」との質問があったのに対し、事務局は「我々としては定義していない。範囲については今後部会でご議論いただきたい」と説明。厚生労働省として、現時点で軽度者の範囲を限定していない考えを示した。
 「負担のあり方」については、利用者負担と費用負担(総報酬割・調整交付金)の2つが検討項目。昨年8月から施行されている一定以上所得者の2割負担、高額介護サービス費の上限額引上の施行状況も踏まえ、そのあり方について検討を行うとしている。

 介護保険料の総報酬割についても、事務局は検討事項として提案したが、委員からは反対意見もあった。

 その他、検討事項として上がったのは、被保険者範囲の拡大。介護保険を支える40歳から64歳までの人口は、25年から減少に転じる一方で、要介護認定率が高い75歳以上人口今後10年間で500万人増加する。こうしたことから、支え手の範囲をどのように考えていくのかが検討事項として位置付けられた。

 昨年の6月に閣議決定された「骨太の方針」では、20年にプライマリーバランスを黒字化するため、社会保障費の伸びを年間5000億円に止めることが課題とされている。7月の参院選を控えての18年改定議論の幕開けとなったが、軽度者サービスの評価や福祉用具の効果をめぐって、利用者負担の拡大と給付の抑制をどこまでとするのかが、今後の議論の争点となる。

 部会は年内取りまとめに向けて、月1~2回のペースで開催。次回からは個別の事項について議論していく予定だ。

(シルバー産業新聞2016年3月10日号)

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