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全国老施協 被災地域へのDWAT派遣に手厚い財政支援を

全国老施協 被災地域へのDWAT派遣に手厚い財政支援を

 今年1月1日に発災した能登半島地震は、現地の高齢者施設にも甚大な被害を及ぼした。全国老人福祉施設協議会の内田芳明災害対策委員長に現地の状況と支援について聞いた。

 当協会では、発災直後に災害対策本部を立ち上げた。

 石川県と近県での被害を想定し、当該地域の会長に状況把握のため電話をした。全国老施協の災害対策委員を務める能登町の特養こすもすの紙谷靖博理事長に連絡したところ、「利用者を避難させている最中です。いま津波警報が出ました」と緊迫した声が聞こえてきた。「頑張ってください」と声をかけるしかできなかった。

 全国老施協と石川県を含む近県の東海北陸ブロックで支援対策会議を開いたが、現地石川県の老施協ですら当初は被災地の様子がわからない状況だった。過去の経験から、物資を県内の拠点に集めて輸送するなどの対策を考えたが、道路が通れず搬入もできなかった。

 これまでの災害と異なり、情報がないことで対策できない困難に直面した。

外部とのつながり完全に断たれる

 1月の終わりに被災地域を訪問した際、現地の連絡通信手段が全て断たれていた事実を知った。多くの電柱が傾き、送電線が道路の上をぶらんとまたぎ、重機を積んだ支援のトラックにより断ち切られていた。電気も止まり、携帯電話の中継基地も作動していなかった。

 特養こすもすでは、2週間、完全に外部との連絡手段がなかった。道路も崩落し、交通も水も絶たれている中、自宅が倒壊した近隣住民も避難してきて、感染症も蔓延した。その中、施設内でなんとか耐えしのいでいた。

 施設では災害時の非常食を2週間程度用意しており、発電機も準備していたが厳しい状況に直面した。発災直後は1日2食、レトルトや缶詰などで、嚥下機能が低下している人を含めなんとか食事を提供した。入浴はできず、トイレも近隣の川の水をバケツで汲み利用していた。飲み水は備蓄の水を利用するしかなく、給水車が来るまでのおよそ1週間を耐えなければならなかった。

 職員も4分の1近くが出勤できず、亡くなった人もいた。そのような中、地域の人が食料を持ち寄ってくれ、洗い物や掃除などできる限りの手伝いをしてくれた。また、敷地内の寮に住んでいた外国人職員が10人程度おり、泊まり込みでケアしてくれた。

 今回、地域との結びつきの大切さを実感した。普段から、地域住民と共にお祭りや催し物などを行い、施設の役割について知ってもらうことが非常時の連携に活きてくるのだろう。

DWATによる長期支援は必須

 全国老施協はDWAT(災害福祉支援チーム)を、1月12日より30回近く現地に派遣している。

 県内施設を中心に高齢者の受け入れを進め、地域交流スペースなどに簡易な仕切りを設け、ベッドを置いて居住スペースを確保した。しかしながら、受け入れ先の施設にも利用者がいるため、人手不足は深刻だ。DWATは、被災地と近隣の避難所となっている施設の両方で必要とされている。

 現在、全国各地から被災地へ向かう交通費や滞在費は派遣元の法人や個人が立て替えている。また、支援を行う際の人件費は原則被災施設が介護サービス費等から負担することとなっているが、1.5次避難所等に施設利用者も集約したために、その財源すらない。

 今後、復興には長い期間がかかることが予想され、安定した支援を継続するためにも国からの財政支援をお願いしたい。
(シルバー産業新聞2024年3月10日号)

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