インタビュー・座談会

世界一の高齢社会・秋田を元気に(1) 市原利晃/半田道子/坂谷優美

世界一の高齢社会・秋田を元気に(1) 市原利晃/半田道子/坂谷優美

 2016年7月時点で秋田県の高齢化率は34.6%。3人に1人以上が65歳という超高齢化社会に突入している。今年4月には県人口100万人を割り込んだ。その秋田で、高齢者の生活に寄り添うケアに取組む人達に集まってもらった。自宅を訪問し、専門スキルを生かしつつ、生活全体を見るオールラウンダーだ。その現場ならではの魅力や難しさを語ってもらった。

在宅支援という視点が重要

 市原 市原と申します。2007年に在宅医療専門のクリニックを開業し10年になります。病院への通院が困難な患者さんの自宅で診察・治療を行いますが、定期的な診療に加え、急に体調が悪くなったときなどには夜間も含め臨時での電話や訪問も対応しています。
 もともとは大学病院で腹部外科が専門でしたが、当時は手術でがんが治りきらない患者さんが、自宅に帰りたくても帰れないケースが多くありました。盛岡で訪問診療のクリニックを見学する機会があったのですが、そこでは患者さんがちゃんと自宅で治療を受けて生活を続けていました。秋田にはそういった医療がまだなかったのです。
 世代的にも「ブラックジャック」への憧れが強く、つまり「何でもできる外科医」になりたいと思ってやってきました。勤務医時代も脳外科や産婦人科の手術に立ち会わせてもらったり、総合病院が一つしかない地方で勉強したり、救急救命センターにも配属しました。
 市原利晃さん

 市原利晃さん

(いちはら・としあき)医学博士。1994 年秋田大学医学部卒業、秋田大学医学部第一外科。07 年秋田往診クリニック開業。日本在宅医学会専門医・指導医、日本消化器外科学会認定登録医・指導医、消化器がん外科治療認定医など。

 半田 秋田市で薬局を経営している半田道子です。先代社長の母の影響で薬剤師を志しました。昔の薬局は、生活の困りごとや介護のことを聞いたりする「よろず相談所」のようなものでした。そのような姿を見て、私も生活を支える関わり方がしたいと思い、介護保険制度がはじまってからはケアマネジャーの資格を取りました。現在はケアマネ事業所とデイサービスも運営しています。
 薬剤師が訪問するときは、薬を届けるだけではなく、身体の具合をみながら飲み方のアドバイスや、飲み忘れの確認を行います。介護用品や福祉用具など、生活アイテムに関する相談も受けています。
 半田道子さん

 半田道子さん

(はんだ・みちこ)薬剤師。1991 年東北薬科大学卒業後、有限会社豆の木調剤薬局で勤務。98 年半田薬局勤務を経て、2000年に有限会社スマイル薬局にて居宅介護支援事業所、05 年にデイサービスセンタースマイル輝を開設。

 坂谷 秋田市で美容室を経営する坂谷優美と申します。以前はサロン勤めで、若いお客さんを中心にファッションショーや結婚式向けの美容まで幅広く行っていました。その中で、高齢のお客さんも多いのですが、年数が経つと「体の具合が悪くなって来られなくなった」という人がよくいました。
 福祉や介護の現場では、いわゆる「施設カット・老人カット」といった画一的な髪形にされることが多いと聞きます。でも、特に女性は何歳になってもきれいでいたいという気持ちは変わりません。諦めるのではなく、引き出して元気にしてあげることが美容師にもできるのではと思い、福祉の勉強をしてお店を立ち上げました。
 市原 美容をされるのは健康な人を対象にしているイメージでしたが、訪問となると歩けない人が多いのですか?
 坂谷 寝たきりの人もいれば、身体は元気だけど認知症の人もいます。今はお客さんの8割が訪問で、やはり何らかの医療、介護サービスを受けられています。来店される方のご家族や、ケアマネジャーからの紹介も増えています。

(ねんりんピック新聞2017in秋田)

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