インタビュー・座談会

世界一の高齢社会・秋田を元気に(3) 市原利晃/半田道子/坂谷優美

世界一の高齢社会・秋田を元気に(3) 市原利晃/半田道子/坂谷優美

 2016年7月時点で秋田県の高齢化率は34.6%。3人に1人以上が65歳という超高齢化社会に突入している。今年4月には県人口100万人を割り込んだ。その秋田で、高齢者の生活に寄り添うケアに取組む人達に集まってもらった。自宅を訪問し、専門スキルを生かしつつ、生活全体を見るオールラウンダーだ。その現場ならではの魅力や難しさを語ってもらった。

地域のつながりを育む

 市原 半田さんは薬、坂谷さんはハサミという武器で在宅に入っていくわけですね。これらはあくまで手段であり、その先に、お二人とも、生活全体を支えるという目標を設定されています。
 しかし、1人の力で目標を達成するのは難しい。大事になるのが職種・地域連携です。私は在宅医療をはじめてすぐに、地域の職種が集まる会を立ち上げました。現在も月1回、勉強会を開いています。医療・介護の専門職に限らず、例えば弁護士に来てもらい、成年後見制度について教えてもらいます。また、檀家さんには亡くなってからの「おくりかた」を聞くこともあります。
 ねらいは、参加した人たちが、自分の地域でさらに連携の輪をつくっていくことです。というのも、まだ秋田市は人が集まりやすいですが、医療も介護も人の資源が乏しい地域のほうが多い。なおのこと連携が必要なのです。
 半田 私のところでは、地域のケアマネジャーやヘルパー向けの勉強会を開いています。内容よりは、顔の見える関係が目的ですね。それと2カ月に1回、誰でも参加できるカフェを開いています。1回20~25人ほど。地域の方もよく来られます。マシントレーニングや絵手紙、カラオケなど、みなさん好きなことばかりやっています。

 坂谷 住民が気軽に集まれる場所っていいですよね。実は、認知症カフェを開きたいと考えていて、色んなカフェを見学してきました。小さな子供からお年寄りまで来るところもあれば、専門職が多いところも。さまざまだと実感しました。
 普段、私のお店に来るのは元気な人や若い人で、「自分には関係ない」という人が多いかもしれません。「美容」を入り口として、こうした人達と一緒に、健康について考える機会を作っていければと思います。
 市原 元気なときから関わって、でも、何かあったときには自宅での生活をお手伝いする。健康・予防と、在宅サービスの周知に、欠かせない活動だと思います。

 半田 薬局も、薬を使う前に、健康食品など、健康づくりを助けるものがたくさんあります。気軽に立ち寄れる生活相談の場を作ること、そして、在宅に出ていくことが大事です。秋田を、ただ高齢化が進んでいる県ではなく、「高齢者が多いのになぜこんなに元気なの?」と思ってもらえるような県にしたいですね。
 市原 在宅医療は、国の後押しもあって随分と流れができました。次は、それを受ける県民みなさんの意識を変えていくことだと考えます。20世紀は、肺炎や結核が流行しました。統計上は「治った」ように見えるのです。特に70~80代の人達にとって病院は「病気が治る場所」というのが一般的な感覚です。でも今、入院患者のトップはがん。これは完全には治りません。高血圧や糖尿病もそう。だからこそ、次の60代の人達には、「治す」だけでなく、自宅で生活しながら「うまく付き合う」という選択肢を知ってもらいたい。
 秋田は農業・林業・漁業が豊かで、さらに昔は銅や石油などの鉱業も盛ん。実は非常に恵まれた県なのです。それが故に、個人的な感覚ですが、秋田の人たちは、少しのんびりしている県民性があるのかなと思います。
 でも、世界で最も高齢化が進む日本の中で、最も高齢化が進んでいます。つまり、秋田は世界の先頭に立っているわけですから、超高齢化社会を乗り越えていくべきなのです。ぜひ「元気な長寿県」をめざしましょう。

(了)


(ねんりんピック新聞2017in秋田)

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