インタビュー

訪問看護BCPは「地域包括型」に(前編)看護人員を相互支援

訪問看護BCPは「地域包括型」に(前編)看護人員を相互支援

 訪問サービスは医療機関や介護施設と比べ、経営資源の多くを「人」が占める。BCPでは人員体制がカギとなるが、「小規模事業所が自前で完結するには限界がある」と慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室の山岸暁美氏は指摘する。同氏は、西日本豪雨で甚大な被害に遭った倉敷市真備町で「地域包括BCP」を策定。他事業所と相互に人員を補う関係性が重要だという。訪問看護での運用について聞いた。

慶應大・山岸暁美氏

慶應大・山岸暁美氏

 2018年7月の西日本豪雨の際、特に被害が大きかった岡山県倉敷市真備町へ入り、倉敷市連合医師会と共同して外部からの支援を調整するプラットフォームの立ち上げなどに携わりました。

 まび記念病院でBCPの策定に着手しましたが、緊急搬送やベッドの確保など、病院単体では運用が成り立たないことを痛感しました。地域に目を向けると、介護・福祉施設や在宅の要介護者など、災害弱者は大勢います。特に介護事業所は中・小規模が多く、BCPは自事業所の「機関型」よりも、地域の様々なステークホルダーと結びついた「地域包括型」が求められます。

 地域包括BCPは、機関型BCPの内容に加え、地域内で課題解決のための役割分担や、事業所間で人材を補うなどの「相互支援協定」を決めておくのがポイントです(図)。

 訪問看護STの場合、業務継続に必要な経営資源のほとんどは「人」と「移動手段」の2つに集約されます。これをどう確保するかを、自事業所のBCPで利用者(患者)個々に定めます。例えば「一定期間なら訪問回数を減らしても大丈夫」「専門看護師のみが対応可」などです。その上で人員が不足している場合に、代わりに訪問ができる他のST(複数が理想)を事業所間で取り決めておくようにします。

 移動手段については複数の移動方法、移動ルートを用意します。自転車や自動車を利用している場合、地震や豪雨で橋が通れないことがあります。また、どのルートも不能となった場合は公共交通機関を代替手段とし、利用者宅への所要時間や電車等の時刻表をあらかじめ把握しておくことが大切です。

 それでもアクセスができない場合、利用者宅の近隣STに支援を要請します。こうした状況に備え、平時からST近くの利用者を中心に担当できるよう、事業所間で調整している地域もあります。

 いつもと違う看護師が訪問する可能性があるので、以上の運用についてはあらかじめ、本人・家族に説明し同意を得ておく必要があります。ただし、訪問看護は医師の指示書を受けたSTが行うのが基本ですので、こうした緊急時の代行訪問については、制度的な議論も必要になります。

 そして、相互支援協定に基づき、派遣・受入れのシミュレーション、訓練を平時より行っておくことが大切です。実際の対応力を高められる上に、地域連携の機運を高める効果もあります。

 また、災害時は既存の利用者だけでなく、避難所への訪問ニーズなども想定されます。のちのち報酬が認められるケースもありますので、緊急時の訪問やケアも、全て記録に残しておくことが大切です。(続)

(シルバー産業新聞2021年3月10日号)

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