インタビュー・座談会
国際医療福祉大・石山教授「自分たちの価値を見つめ直すチャンス」
6月15日に閣議決定された、政府の「骨太の方針2018」では、「自立支援・重度化防止等に資するAIも活用した科学的なケアプランの実用化に向けた取組を推進する」との方針が明記されています。ケアマネジャーとしては、将来的にケアマネジメントの現場にAIが入ってくることを想定しておく必要があるでしょう。
ケアマネジメント、AI活用の可能性
AIケアプランについて考える時、まずはAIとケアマネジャーとの関係性をどう考えるのか。これを最初に決めておくことがとても重要です。ケアプランを作成する上で、AIをツールとして使うのか、それともAIに任せてしまうのか。専門職として自分たちの立ち位置というものを決める、あるいは宣言する必要があると思います。
なぜなら、研究・開発されている物が、ケアマネジャーに役立つ物をつくろうとしているのか、ケアマネジャーに代わる物をつくろうとしているのか。それによって、研究や協力の仕方も変わってくるからです。より高度な専門性が求められるようになる
ケアプラン作成において、AIが人間より優れている点は、①疲労を感じることなく自立支援の、探求を続ける②中立性に優れる③複数の選択肢を瞬時に示せる――の大きく3つだと考えます。
こうした特性を理解した上で、AIをうまく使って、自分にはなかった発想を取り入れたり、見落としをチェックしたりするのに役立てる。AIは「自立支援に資するケアプランを作成するための方法論の一つ」というのが、私の考え方です。
現在、研究・開発されているAIケアプランは、①ブラックボックス型②ホワイトボックス型の大きく2つの種類に分かれます。ブラックボックス型は、膨大なデータを使って深層学習を行い、自動的に高精度の予測を立てるタイプのAIです。ただ、なぜその答えを導き出したのかについては、説明ができません。「ブラックボックス型」と言われる所以です。
反対に、ホワイトボックス型は、なぜそのように予測したのかを明確にすることが可能です。こちらのタイプだと、教育ツールとしても使うことができます。将来、どちらのタイプが普及していくかは、今の段階では分かりませんが、個人的にはAIが使えるようになったからと言って、ケアプラン作成が今より楽になるとは考えていません。その分、より高度な専門性が求められるようになるからです。
実際には、AIがなぜこのケアプランを導き出したのかを分析・説明できないといけませんし、提示されたケアプランを身体的側面からだけでなく、社会的側面、精神的側面なども含めて、その利用者にあったプランにチューニングできないといけません。つまり、より専門的に利用者を見たり、より論理的にケアプランを説明できないといけなくなるわけです。
なぜなら、研究・開発されている物が、ケアマネジャーに役立つ物をつくろうとしているのか、ケアマネジャーに代わる物をつくろうとしているのか。それによって、研究や協力の仕方も変わってくるからです。より高度な専門性が求められるようになる
ケアプラン作成において、AIが人間より優れている点は、①疲労を感じることなく自立支援の、探求を続ける②中立性に優れる③複数の選択肢を瞬時に示せる――の大きく3つだと考えます。
こうした特性を理解した上で、AIをうまく使って、自分にはなかった発想を取り入れたり、見落としをチェックしたりするのに役立てる。AIは「自立支援に資するケアプランを作成するための方法論の一つ」というのが、私の考え方です。
現在、研究・開発されているAIケアプランは、①ブラックボックス型②ホワイトボックス型の大きく2つの種類に分かれます。ブラックボックス型は、膨大なデータを使って深層学習を行い、自動的に高精度の予測を立てるタイプのAIです。ただ、なぜその答えを導き出したのかについては、説明ができません。「ブラックボックス型」と言われる所以です。
反対に、ホワイトボックス型は、なぜそのように予測したのかを明確にすることが可能です。こちらのタイプだと、教育ツールとしても使うことができます。将来、どちらのタイプが普及していくかは、今の段階では分かりませんが、個人的にはAIが使えるようになったからと言って、ケアプラン作成が今より楽になるとは考えていません。その分、より高度な専門性が求められるようになるからです。
実際には、AIがなぜこのケアプランを導き出したのかを分析・説明できないといけませんし、提示されたケアプランを身体的側面からだけでなく、社会的側面、精神的側面なども含めて、その利用者にあったプランにチューニングできないといけません。つまり、より専門的に利用者を見たり、より論理的にケアプランを説明できないといけなくなるわけです。
仕事の仕方や報酬のあり方も大きく変わる
ICTやロボット、センサーなどは、現在、目覚ましい速さで進化しています。今回の介護報酬改定では、一部ですがこれらの導入を報酬上で評価していくことになりました。AIの導入は時間がかかるかもしれませんが、ICTなどは今後、おそらくもっと現場に入ってくるでしょう。そうすると、明らかにケアマネジャーの仕事の仕方も変わってきますし、介護報酬の評価も変わってきます。
たとえば、過去に行われたケアマネジャーの業務実態に関するタイムスタディ調査では、ケアマネジャーが連絡・調整にかけている時間は、業務全体の5割弱となっています。ここがICT化によって、瞬時に多職種に情報が共有できる仕組みができたとすると、その分の手間は激減します。介護報酬は手間の評価ですので、今の報酬が適切かどうか議論になる可能性があります。
あるいは、AIケアプランを使っていれば、その分、業務の効率化が図れるため、ケアマネジャー1人あたりの担当件数を余分に持つことが可能になるなどの考え方もあるでしょう。
介護保険が始まった時に、スマートフォンを一人一台所有する時代が来ると誰も思っていなかったことから考えると、こうしたことも想定しておく必要があるのではないでしょうか。工学技術によるパラダイムシフトが起きた時に、大事なのは「ケアマネジメントの価値とは何なのか」という原点の部分だと思います。ケアマネジャーが関わることで、その利用者にとってどれだけ良いことがもたらされたか、その効果を研究、証明して、発信していくことが必要です。
そこができないのであれば、人間がAIにとって代わられても仕方ないのではないでしょうか。
個人的には、AIが入ってくることを危機と捉えるのではなく、自分たちの専門性や価値を見つめ直すチャンスだと捉えて、向き合っていくことが大事だと思っています。
(シルバー産業新聞2018年8月10日号)
たとえば、過去に行われたケアマネジャーの業務実態に関するタイムスタディ調査では、ケアマネジャーが連絡・調整にかけている時間は、業務全体の5割弱となっています。ここがICT化によって、瞬時に多職種に情報が共有できる仕組みができたとすると、その分の手間は激減します。介護報酬は手間の評価ですので、今の報酬が適切かどうか議論になる可能性があります。
あるいは、AIケアプランを使っていれば、その分、業務の効率化が図れるため、ケアマネジャー1人あたりの担当件数を余分に持つことが可能になるなどの考え方もあるでしょう。
介護保険が始まった時に、スマートフォンを一人一台所有する時代が来ると誰も思っていなかったことから考えると、こうしたことも想定しておく必要があるのではないでしょうか。工学技術によるパラダイムシフトが起きた時に、大事なのは「ケアマネジメントの価値とは何なのか」という原点の部分だと思います。ケアマネジャーが関わることで、その利用者にとってどれだけ良いことがもたらされたか、その効果を研究、証明して、発信していくことが必要です。
そこができないのであれば、人間がAIにとって代わられても仕方ないのではないでしょうか。
個人的には、AIが入ってくることを危機と捉えるのではなく、自分たちの専門性や価値を見つめ直すチャンスだと捉えて、向き合っていくことが大事だと思っています。
(シルバー産業新聞2018年8月10日号)