インタビュー

デイサービス新時代~在宅生活を見据えた入浴支援を評価~(前編)

デイサービス新時代~在宅生活を見据えた入浴支援を評価~(前編)

 21年度介護報酬改定で、通所サービスの「入浴介助加算」の見直しが図られる。通所事業所で完結する個別対応の入浴に留まらず、自宅でも本人自身または周囲の軽介助だけで入浴ができるように、多職種連携の自宅での入浴自立に向けた一連の取り組みを上位加算として新設する。ポイント解説と合わせ、全国に先駆けてこうした在宅視点のデイサービス運営を先取りしてきた「デイサービス楽」(大分市)の入浴自立に向けた実践事例について、佐藤孝臣社長(作業療法士)のインタビュー(前編)を紹介する。

多職種連携による入浴自立支援で新加算

 ――21年改定で入浴介助の上位加算が新設されます。

 我々が事業所を構える大分県は介護予防・日常生活支援総合事業の取り組みの先駆的地域です。自治体から総合事業C型の委託を受け、そこでの成果を示すことができたことが、今回の流れにつながってきたと思っています。

 ――自宅での入浴を支援するための方法は。

 「これをすればよい」「こうしなさい」という形はなくて、その人の身体状況・能力、浴槽の形状、疾病などによってさまざまです。だからこそ専門職の関与によって、自宅での入浴ができない理由を探る必要があるのです。

 単純に筋力をつければよいのではなく、入浴動作を想定した筋力を鍛える必要があります。例えば浴槽のまたぎ動作ができないと、一人で入浴することはできません。

 ですから、必要な部位をステップ運動や台の昇降運動などで効果的に鍛えます。本人には「この筋力を鍛えることで、またぎ動作に必要な筋力が獲得できます」などと説明し、目的意識をもって取組んでもらうことも重要です。

 足首の柔軟性もバランスよく鍛えないといけませんが、集中的に鍛えることができる専用マシンはなかったので、ウェルファン(大阪府寝屋川市、清水義生社長)とともに、安価に購入できる専用機器「楽々シリーズ」として開発しました。

 福祉用具の活用も選択肢の一つです。浴槽のタイプは様々なため、入浴時に必要な足上げの高さなども千差万別です。そうした時には、入浴台を導入するだけでも足上げの高さを補うことができます。膝関節の曲げ伸ばしが難しく、洗体が難しい人には通常より高さのあるシャワーチェアの導入で解決することもあります。バスボードを使えば、浴槽に浸かる時に腰かけてゆっくり安全に動作することができることもあります。

 ――トレーニングと環境整備の両面の支援が必要なのですね。

 そうです。福祉用具事業者に相談して自宅の入浴環境を整えながら、デイサービスでのトレーニングを合わせることで可能となることも多いのです。

 意外かもしれませんが、薬剤師や栄養士、歯科医に相談することで解決することもあります。

 熱心にトレーニングをしても思うような動作ができない人がいました。管理栄養士から「栄養状態が悪い。食べることができていない」と指摘され、確認したところ入れ歯が合っておらず、食べられず、かみ合わせで力が入りにくいなどが判明しました。歯科医に相談し、入れ歯を作り直すことで栄養状態が改善し、筋力がついて改善することがありました。

 また、ある人は「足上げが怖くてできない」と訴えられました。筋力やその他状況からできるはずの人でしたが、薬剤師によれば「多剤服用によるめまいが起きている」とのことで、薬剤調整をして改善することがありました。

 「またぎ」動作ひとつにも、その背景は様々です(図)。リハ職だけ、介護職だけ、福祉用具事業者だけで解決できるものではないので、実際に訪問して、多職種連携で要因を正しく把握してから取り組むことの重要性がご理解いただけたかと思います。(続)

解説

 自立支援・重度化防止の観点から、通所サービスの入浴介助加算を充実させ「自宅へ専門職が訪問して課題を探る」「課題に基づいて支援計画を策定し、通所事業所で自立入浴に向けた支援」「PDCAサイクルで計画を見直す」という一連のプロセスに対し、これまでの加算とは別の新設加算が認められる。

 訪問する専門職は医師やリハビリ職などだが、在宅での高齢者の生活の実際をよく知る介護福祉士でも認められる(デイサービスの場合)。

 手法としては、リハビリ的アプローチによる関節可動域向上や筋力向上だけでなく、環境整備として、ケアマネジャーのケアプランに基づいて、必要に応じて福祉用具専門相談員が介在し、最適な特定福祉用具や住宅改修による支援をすることも、加算算定の多職種連携に含まれる(イラスト)。

 自宅の入浴環境は、通所事業所と比べてバリアフリー設計や介護力の面で劣るため、本人の身体機能の向上と合わせて、シャワーチェアや入浴台、浴槽グリップなどの特定福祉用具などと合わせて実現することが求められていると言える。

 国の目指す自立支援・重度化防止の観点から、18年改定では、排泄に関して介護施設での多職種連携によるPDCAサイクルを評価する加算が新設されたほか、摂食嚥下や栄養に関する取り組みを評価する加算が増えた。今回の見直しは、身近な通所介護の入浴を在宅生活維持の実践的な内容に引き上げるもので、3大介護とされる「食事」「排泄」「入浴」のすべての対応が講じられることになる。
(シルバー産業新聞2021年1月10日号)

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