インタビュー

デイサービス新時代~在宅生活を見据えた入浴支援を評価~(後編)

デイサービス新時代~在宅生活を見据えた入浴支援を評価~(後編)

 2021年度介護報酬改定では、通所系サービスに「入浴介助加算(Ⅱ)」として、自宅での入浴を目指した取り組みを高く評価する加算設定が行われた。算定のポイントは「自立を達成したい」という目標を本人や家族と共有できていること。前号に引き続き、大分県で自立支援型デイサービスに取組み、軽度者から中重度者まで自立達成で実績を重ねる「デイサービス楽」を運営するライフリーの佐藤孝臣社長(作業療法士)に、入浴自立を含め、軽度者から重度者まで自立を達成するためのポイントを聞いた。

重度者こそ自立の可能性

 ――21年度介護報酬の単価が発表され、通所系サービスでは、入浴介助加算が自宅入浴のための多職種連携を高く評価するようになりました。

 今回の「入浴介助加算(Ⅱ)」は多職種連携によるPDCAサイクルを評価するものですが、将来的にはアウトカム(結果)を目指す流れが加速していくと思います。

 ただ、通所系サービスをレスパイト目的で利用されている家族も多く、在宅介護を続ける拠り所になっていることも事実で、自立支援型サービスを強制することになってはいけません。

 あくまでも本人が「身の周りのことを自分できるようになりたい」「家族に負担をかけたくない」という思いが共有できて、その上で取り組むべきです。今回の改定の狙いは、レスパイト型、自立支援型の両方の通所系サービスが整備されることで、利用者や家族が選択できる環境を整えようとしているのだと捉えています。

 裏を返せば、自立支援型の通所系サービスが全国的に少ないことがあり、その背景に報酬が自立支援型に厳しい体系があるので、適正評価を目指したのではないかとみています。

 ――「デイサービス楽」は自立支援型で有名ですが、サービス提供で心掛けていることは。

 前回18年度介護報酬改定で、デイサービスにアウトカム評価を取り入れた「ADL維持等加算」が導入されました。21年度改定では評価が10倍(「Ⅰ」3単位⇒30単位、「Ⅱ」6単位⇒60単位)になり、算定対象サービスも拡大するなど注目を集めているわけですが、自立支援型は万人受けするものではありません。

 我々は古くから自立支援型デイサービスを展開してきましたが、利用開始にあたって十分な説明をしたつもりでも「身の回りのことをしてくれない」「利用者を動かせるとは横着だ」など利用者や家族からクレームが多かったわけです。

 利用開始にあたって「レスパイトケアを希望されるのであれば、期待に沿えないかもしれない」ということを丁寧に説明する必要があります。

 特に今回の改定では、アウトカム評価次第で通所サービス事業所に高い加算を認めるという見直しですから、利用者にとっては負担が増えるわけで、利用者や家族の希望をきっちりと確認する必要があるのです。

 ――改善の可能性が見込めるのは軽度者という考えもありますが。

 その指摘は当たりません。当事業所では要介護4の人の改善率が55%なのに対し、要支援の人は20~35%くらいで推移しており、一概に軽度者が改善しやすいとは言えません。

 脳卒中などを原因とする介護度の高い人は、リハビリをすることでADL評価は改善しやすいのですが、軽度者は「できない」ではなくて「していない」状態の人も多いので、より高度な日常生活行為である「手段的日常生活動作(IADL)」ができるように、サービスを提供する必要があるからです。

 ――中重度者も改善を目指すことはできるのですね。

 そうです。進行性の疾病をもつ利用者の場合でも、医師と連携をとりながら、通所系サービス事業所で、今できることを少しでも長く継続してもらう方法はあります。同時に自宅に帰ると、進行性の疾病だからと周囲や家族が先回りして世話をしてくれている状態では、本人ができることもしなくなる恐れがあります。

 今回の「入浴介助加算Ⅱ」の算定要件に、専門職が自宅訪問をすることが求められますが、こうした状況も合わせて確認することができます。

 ――軽度者の場合はどうですか。

 例えば入浴の自立では、インテークの段階で自立の可能性を見極める必要があります。ただ、通所サービスの利用者のほとんどは、身体機能改善や福祉用具や住宅改修などの住環境整備などによって、自分で入浴できるようになる人です。

 60代女性の事例では「人前で裸になりたくない」という本人の思いがあり、入浴の自立を目指すことになりました。筋力や跨ぎ動作に課題があると判断し「足ふみ運動」「足首の柔軟性向上」に取り組んでもらった結果、自分一人で90分かかっていた入浴時間を、30分に短縮させることができました。その後、本人の口から「今度は温泉に行ってみたい」と、さらに高いIADLの目標が示されるなど改善のスパイラルが続きました。

 ――目標達成が次の目標につながるのですね。

 改善ができれば、ほかのADLやIADLの向上に波及していきます。特にベッドや布団から離床し「安定的な自立と歩行」ができるようになれば、他への改善波及が見込めるので、目指していただきたい点です。

 最後に、アウトカムを目指す上で栄養状態と口腔内環境の改善は欠かせません。今回の改定で通所系サービスにも栄養改善に関する加算が導入されるようになりましたが、栄養状態と自立支援は非常に関連が深いので、相乗効果を大いに期待しているところです。

【解説】自宅訪問を伴う新類型を高評価 現行要件は報酬引下げへ

 2021年度介護報酬改定で、通所系サービスに「入浴介助加算(Ⅱ)」(55単位、通所リハは60単位)が新設された。同時に現行の加算相当の内容は「入浴介助加算(Ⅰ)」(40単位)として、50単位から10単位引き下げられた。自宅での入浴を自立や、できるだけ介助者の負担を少なくすることを目指す取り組みを高く評価する狙い。

 同(Ⅱ)の算定には、自宅での入浴に必要な支援を把握するため、医師やリハ職(通所介護のみ介護福祉士でも可)などが自宅訪問をして浴槽環境などを確認、その内容を受けて個別計画に基づいた入浴介助をする、一連のPDCAサイクルを評価する。

 自宅浴槽などの入浴環境から、特定福祉用具販売や住宅改修を利用することで自立が見込める場合は、必要に応じてケアマネジャーや福祉用具事業者などと連携し、福祉用具サービスの利用も求めている。

 在宅復帰や自立支援重視を鮮明にした内容で「自宅入浴を前提にした通所事業所での入浴」に取り組む通所系サービス事業所を報酬上で評価する。

(シルバー産業新聞2021年2月10日号)

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