コラム

より良い福祉用具研究・開発のために/米崎二朗

より良い福祉用具研究・開発のために/米崎二朗

 2002年に「福祉用具の日」が制定され、今年で早13年が経過しました。この間、さまざまな福祉用具の研究・開発がなされ、利用いただく機会が多くなりました。利用者の声から得られた情報をもとに、リハビリテーションや介護の専門家を交えて、利用者と対話・ディスカッションすることが重要です。

 当研究室では、これまでにも、企業・メーカー、大学などの研究機関などからの研究・開発に関する相談を受け、指導・助言、あるいは共同研究・開発などをすすめてきました。また、一方では、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の行う「課題解決型福祉用具実用化開発支援事業」にも技術委員として参画してきました。

 しかし、最近の傾向として、いくつかの研究・開発においては、やや行き詰まりの様子も見受けられます。新たな研究・開発テーマが掲げられるのは良いのですが、残念ながら、利用者のニーズとは合致しないものも多くあります。その主な原因の一つとして、研究開発の背景として、利用者のニーズを正確に把握するところから始まっていないことがあげられます。

 ただ闇雲に、数多くの利用者の声を聞けば良いということでもありません。まずは、利用者の声をありのままにとらえることが必要なのですが、そこで得られたさまざまな情報をもとに、リハビリテーションや介護の専門家を交えながら真のニーズを分析しまとめ、提案式による利用者との対話・ディスカッションが重要なのです。

 当研究室では、長年、利用者との交流に重点を置き、福祉用具の研究・開発に対するしくみづくりを行っています。また、相談事業においては、製作・改良サービスを通じて個々の利用者ニーズの充足に取り組み、その結果を企業・メーカー等にフィードバックしてきました。

 現在は、研究・開発に従事する方々への情報提供、指導・助言、技術協力の場面として、実際の利用者のくらしとの接点が設けられるようなしくみづくりを検討中です。その提案型の研究開発支援システムとして「SMART-systems」を構築中です。その一部(主にポジショニング関連のもの)をご紹介させていただきます。

 当研究室の事業及び取り組み等にご興味のある方は、下記ホームページをご参照ください。
 V-SIENホームページ内 大阪市援助技術研究室http://www.v-sien.org/assistech/
 大阪市ホームページ内 大阪市援助技術研究室http://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000290061.html
ベッドポジショニング

 ベッド上のポジショニングと言えば、一般的に褥瘡予防あるいは拘縮予防を目的とした仕様が中心となっていますが、これは、利用者の残存機能を最大限に発揮するための活動性向上のためのポジショニング仕様・目的として研究開発しているものです。また、脊柱、四肢の変形・拘縮に対するより適正なポジショニング処方としても活用できるようになっています。これまでに、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、脊髄小脳変性症などの神経難病のある人に適用しています。
トイレキャリー

 筋萎縮性側索硬化症患者とその家族の要望で製作したことが発端です。姿勢変換機構のシャワーキャリー等があり、トイレ用として使用することができます。しかし、姿勢変換時(リクライニング時)、その調整レバーが後方にあり、狭いトイレ環境では、前から操作することは困難です。

 前方から介助者がレバー操作で姿勢変換角度を調整しやすいトイレキャリーを製作しました。
トイレ用ポジショニングシステム

 あるパーキンソン病の方から、自宅の便器では体が横に傾いてしまい、介護者が常に姿勢修正をしなければならないので困っているとの相談を受けました。大腿部(太ももの部分)と骨盤後方(お尻の後ろ)の支持があれば安定して座れることがわかりましたが、自宅の便器は他の家族との共有スペースであるため、簡単に取り外し、開閉できるものを製作しました。 これによって、姿勢修正をする必要性が大幅になくなりました。
入浴用ポジショニングシステム
 
 上記と同じパーキンソン病の方から、自宅の浴室でのいす(市販の簡易的なシャワーチェアを使用)では体が横に傾いてしまい、トイレと同様に頻繁に姿勢修正が必要でした。安定した座位姿勢が獲得できるように、しっかりとした姿勢保持機能(骨盤後方支持を強化)のついたいすを製作しました。
 これによって、姿勢修正をする必要性が大幅になくなるとともに、安定した座位姿勢を獲得したことで、浴槽への出入り、浴室内(洗い場、脱衣室)の歩行にも良い影響を及ぼす結果となりました。
家具用ポジショニングシステム

 当研究室では、神経難病患者の方からの相談を多く受けます。一般的には、歩行が困難になってこられた方、座位姿勢の獲得が難しくなってきた方には、自宅内用として姿勢保持・姿勢変換機構を含んだ車いすが適用されます。しかし、実際には、多くの患者の方は、病気の進行に伴う心理社会的影響により、車いすの導入に抵抗を示される方がほとんどです。

 家具用ポジショニングシステム.jpg できる限り、今までの生活形態を変えたくない、それは当たり前の気持ちでもあると考えております。リビングのいす、ソファなどの家具類に簡易的に取り付け可能で、且つ身体状況に応じた部品選択・調整の可能なモジュラー式のポジショニングシステムを製作し、多くの方に適用してきました。
<プロフィール>
 85年3月国立療養所近畿中央病院附属リハビリテーション学院作業療法学科卒業。静岡リハビリテーション病院、海外青年協力隊などを経て93年9月から現職場に勤務

(福祉用具の日しんぶん2015年10月1日)

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