連載《プリズム》

賃上げの春となるか

 去る1月19日、医療・介護・障がい福祉関係団体との賃上げについての意見交換会が、首相官邸で行われた。岸田文雄首相や武見敬三厚労大臣らが出席、日本医師会など医療関係8団体、老施協や全老健など介護関係12団体、障がい福祉4団体の会長が勢揃いした。

国は、医療+0.88%や介護+1.59%、障がい福祉+1.12%などの報酬引上げと、賃上げ促進減税の活用などをてこに、今年の賃上げ率を2.5%アップに、来年は2.0%アップをめざすよう強く要請した。
 
▼賃上げ促進税制は、全雇用者の給与総額が前年度増になることや、教育訓練費の活用、女性活躍・子育て支援などを要件に一定の減税を実施するもので、現行より控除率を引き上げた。法人税のない社会福祉法人では、そもそも減税の恩恵はないが、赤字の中小企業には5年間の「繰越控除措置」を認めた
 
▼賃上げ率2.5%という数字は、24年の日銀の物価上昇目標値2.0%があり、物価が政府の思いどおりに上がるとすると、賃上げが進まなければ、介護職の生活水準が下がりかねず、賃上げができない業界も取り残される。そこで、賃上げは必須、と国は介護事業者らに迫った
 
▼しかし、政府のねらいどおり、医療や介護、障がい福祉分野において、賃上げと業績アップの好循環をめざそうと思っても、保険料と税金で賄われるこの世界で、たとえば制度外サービスを広げて、益増を図ろうとしても、並大抵ではない。毎月数千円、数万円の社会保険料を支払っているのに、制度内サービスを受けられないのは利用者の納得が得られないからだ。半数を超える特養や老健の赤字施設では、労務費増で事業運営が立ち行かないリスクが増す。他産業に移る介護人材が増えている中で、公的な支援を得てでも、介護人材の賃上げは避けては通れない。

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