連載《プリズム》

自立支援と福祉用具貸与

福祉用具貸与と販売の選択制導入の方向性がほぼ決まった。厚労省は、当面は固定用スロープ、歩行補助杖や歩行器に限定した。

 今回選択制の対象になった貸与品は、大手レンタル事業所のトーカイでの全貸与品に占める割合は3%程度とされる。しかし厚労省は、選択制を「自立支援をめざす介護保険にあって、利用者の意思によって貸与と販売を選択する仕組み」として、今後の状況しだいで選択制の対象を見直す方向性を示している。10月30日の検討会では「今回対象としなかった用具についても、今後、検討が必要」とした。

▼なぜ、介護保険の福祉用具サービスが貸与原則になっているのか。国は、「利用者の身体状況や要介護度の変化、福祉用具の機能の向上に応じて、適時・適切な福祉用具を利用者に提供できるよう、貸与を原則としている」と、「介護保険における福祉用具 給付制度の概要」で記述する。レンタル品を利用するのは要介護認定を受けた要介護・要支援者であり、「利用者の身体状況や要介護の変化」がある人たちだ。最適な福祉用具の活用こそ自立支援になる。

▼5面のケアマネアンケートで、選択制導入の是非を聞いたところ、当事者の意向を重視する国の姿勢を評価するケアマネジャーが多かったが、同時に、利用者には貸与を提案するという答えが大勢を占めた。本人や家族には予後予測が難しく、用具の利用期間を判断して貸与か販売(購入)を選ぶのは困難で、専門職でも同様という答えがあった。貸与原則の所以といえる。購入は、倫理的にも購入後の転売が問題視されてきた経緯がある。

▼改正介護保険法で介護の生産性向上が明記され、その取組が義務付けられる。厚労省は、「介護業務効率化・生産性向上推進室」を設けて、人手不足の中でも介護サービスの質の維持・向上を実現するマネジメントモデルの構築をめざしている。在宅では、福祉用具の活用により利用者自身による自立支援を進め、介護負担を軽減する。選択制の導入がこの方向性に棹さすものであってはならない。

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