連載《プリズム》

地域ネットワークの力

地域ネットワークの力

 12年度改正でわれわれは介護保険の誇りを取り戻すことができるだろうか。これまでの10年間で確実に成功したのは民間の参入だ。(プリズム2011年1月)

 大阪大学大学院教授に就任した頃、元厚労省幹部だった埠修三さんは、「保険あって給付なしにならなかったのは、民間参入がうまくいったから。この点はもっと評価されるぺきだ」と強調した。全国津々浦々介護保険サーピスが行き渡るようになったのは、運常主体を規制しなかったからだ。12年度改正では、市町村による事業法人の公募制が掲げられているが、事業参入の自由は介護保険の命であることを忘れないようにしたい。

 今月号で、同じく元厚労省幹部の辻哲夫東大教授を取材した。「中重度になっても在宅で過ごすためには、医療は必要だ。在宅医療の充実なしに地域包括ケアは進まない」と、医療と介護の連携強化を辻氏は力説した。介譲保険制度創設
当初、地域医療へ強い関心をもって介識事業に臨もうとした医療者が少しずつ病院医療へ戻った。もう一度地域医療へ舞い戻ってもらえるだろうか。思い切った財政の投入も必要になるだろう。

 辻氏のもうひとつの武器がITだ。現没の宮島俊彦老健局長も、病院内のイントラネットのような情報ネットワークが地域で築かれ、介護事業所や医療機関、行政、支払いサイドなどがつながれば、事務負担の軽減など業務の効率化が格段に向上すると言った。辻氏は千葉県柏市でそうした仕組みをモデル構築する意向だ。

 とはいえ社会福祉法人、医療磯関、民間企業、NPO法人、行政らが入り交じって、IT活用で効率的に、医療と介證の連携を深めることは、言うは易しいがこれほど難しいことはない。病院内にはIT化の前に人のつながりとルールがある。地域の医療介護のネットワークに命を吹き込むのは、地域で開催される協議会や事例検討会などでの日々の交流ではないだろうか。公募制のような閉じられた仕組みではなく、自由な運常主体どうしが、介護保険のルールのなかで地域でつながっていくことを期待したい。

(シルバー産業新聞2011年1月10日号)

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