連載《プリズム》

自立支援に向かって、歩く

自立支援に向かって、歩く

 誰もが、一連の繰り返し動作である「歩く」ことを、赤ちゃん時代には、首の据わり、お座り、はいはい、つかまり立ちを経て、何度も転びながら習得してきた。それが、歳をとって、膝痛や腰痛などもあり、あまり歩かなくなると、徐々に筋力低下を伴いながら、「歩く」という基本動作を忘れていくらしい。(プリズム2018年6月)

 いま、自立支援・重度化予防をめざす介護保険で、歩行の重要性が際立ってきた。歩行に関するエビデンスはこれまでも積み上げられている。2004年からデイサービスを展開するポラリス(兵庫県宝塚市)は、歩行練習用に低速のトレッドミルを活用することで、神経と体全体で忘れかけてきた「歩く」を思い出してもらうケアを実践し、ADL(日常生活動作)を改善する。ベルトドライブの補助で右、左と足を動かすうちに、歩き方がよみがえり、後は自分で歩けるようになっていく。

 しかし、高齢者の歩行には、転倒のリスク回避が欠かせない。施設や病院などでは、介護者やセラピストが歩行に付きそう姿がある。ポラリスの歩行練習機「Pウォーク」(モリトー)は、ベルトドライブする歩行部とともに、懸架式のつり具が付いていて、転倒を防いでくれるので、介護者にとっても安心して利用できる。疾病や事故によって歩行が困難になった際にも、義肢装具や歩行支援機器を使って「歩く」を確保できる。

 18年3月に発表された「自立支援介護に関する調査研究」の中で、OTやPTが介入するデイサービス事業所において、セラピストが個々の歩行機能の変化に合わせて、適切な歩行補助具を提案(431人)したところ、12カ月を経て、歩行速度を維持することができていた。一方で、対照群(399人)として、OTやPTが配置されていない事業所では、歩行速度が有意に低下したという調査結果も出ている。エビデンスレベルⅢの「非無作為化比較試験」という科学的根拠の高い調査手法で行われた。こうした成果は、自立支援・重度化予防を推進するために、専門職の適切な支援とともに、道具(福祉用具、リハビリ機器)が転倒などの事故防止の役割も果たしながら、有効であることを物語っている。

(シルバー産業新聞2018年6月10日号)

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