連載《プリズム》

葉っぱのフレディ

葉っぱのフレディ

 まもなくお盆を迎える。先祖を祭って花を置き、ロウソクを灯し線香を焚く。子どもの時分から、墓には祖母に連れられて手を合わせ、生命が受け継がれてきたことを教えられた。(プリズム2017年8月)

 日本における日本人の出生・死亡の数をまとめる、総務省の住民基本台帳によると、2016年1年間の出生数は98万1202人、死亡は130万9515人で、1年間で32万8313人の減少になったと公表。日本は、少産多死の時代を迎えている。

 7月19日、聖路加国際病院名誉院長の日野原重明さんが満105歳で亡くなった。最後まで社会の第一線で活躍され、「Mr.長寿」と称えられるにふさわしい人生だった。本屋さんの絵本コナーに行くと、『葉っぱのフレディ~いのちの旅~』という絵本に出会う。日野原さんは、ベストセラーのこの絵本を、たくさんの子どもたちが葉っぱを演じるミュージカルに仕立て上げた。春に生まれた若葉が、温かい日差しを受けて、根から吸い上げた養分でぐんぐん成長。夏には青々とした葉になって、人々に日陰を提供する。秋を迎えて紅葉し、やがて冬になって枯れ葉となって一生を終える。落ち葉は朽ちて土となり、春を迎えて、新しい青葉の養分になる。私たちの人生も、多くの生き物も、葉っぱのフレディと同じように、生と死の営みを繰り替えている。以前、ミュージカル公演の記者発表があり、日野原さんがお元気な姿で説明されていたのを思い出す。

 やなせたかしさん作詞、いずみたくさん作曲の「手のひらを太陽に」という歌がある。手を太陽にかざすと、真っ赤な血が流れている。「ぼくらはみんな 生きている」と実感する。生きているから、笑いもすれば、かなしみもする。「ミミズだって オケラだって アメンボだって みんな みんな生きているんだ 友だちなんだ」。夏の木陰、木々の葉っぱのあいだから洩れる陽光が、ぼんやりと丸い陰を落として、風にゆれる。

(シルバー産業新聞2017年8月10日号)

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