連載《プリズム》

有床診療所の役割

有床診療所の役割

 北海道旭川市で有床診療所を開く林医院の林宏一医師を訪ねた。林医師は父の宏紀さんの後を受け継ぎ、88年から院長を務める。(プリズム2014年6月)

 旭川医科大で消化器外科医長を務めたが、地域医療の現場では専門分野以外のあらゆる疾患の患者さんを診なくてはならない。「最近の総合医は全科を診る専門医として注目されているが、これまでの専門医も、山裾が広がるように、広い分野の知識や経験を身につけ、開業して家庭医としてがんばってきた」。

 有床診療所は病院へ事業拡大するのが民間医療機関の常だった。だが、すでに病床規制があり断念せざるを得なかった。介護保険が始まる前年の99年、社会福祉法人を設立し、特養とケアハウスを開設した。訪問入浴や訪問介護などを行う有限会社も設けた。「医療だけでは対応できない。特に退院はしたが自宅では不安があるという高齢者を、継続的に、包括的にケアする必要を感じた」。

 19床の有床診療所は、9床を一般病床、10床を介護療養病床に切り替えた。「有床診療所の診療報酬は、1人およそ月30万円。19床なら、ざっと600万円。在宅医療に比べて、決して高くはない。これからも有床診療所は減っていく」と危惧する。全国的にも、無床診療所は増加する。一方、90年に2万3,000施設(27万床)あった有床診療所は、13年6月時点で9,300施設(12万床)まで減少した。

 14年診療報酬改定では、在宅や急性期の後方支援などを要件に有床診療所の入院基本料が引き上げられた。看護配置加算の引き上げや、看護補助配置加算の新設もある。義務づけになる予定だった管理栄養士の配置は、加算のまま継続されることになった。増大する地域包括ケアのニーズの受け皿にと、有床診療所の存在が期待されているからだ。

 現在、道医師会の常任理事として、地域福祉部長も務める林医師。今後も医療と介護の一体的なサービス提供に注力することを約束しつつも、「入院患者を抱えていれば、行動は制限される。若い世代の医師が有床診療所を継ぐかどうかは分からない」と懸念する。

(シルバー産業新聞2014年6月10日号)

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