生き活きケア

施設長は設計技師 コロナまん延防ぐ

施設長は設計技師 コロナまん延防ぐ

介護施設なども手がけてきた設計事務所から介護事業に転身した「一休庵」の長浜清通施設長。2007年に始めた介護事業所「一休庵」は、施設内の照明が評価されて、日本建築照明大賞を受賞した。地域に開放されたカフェや配食が介護サービスの利用者と家族を結んでいる。

 富山県の2拠点で介護事業と配食サービスを行う「一休庵」(富山市、長浜清通社長)を訪問した。富山湾に近い富山市四方と隣接する滑川市で、2007年からデイサービスや小規模多機能などを展開する一方、地域交流レストランと配食サービスを行っている。富山市四方は中心部から車で30分近くを要する。

 実家が富山で配置薬を営む長浜施設長は、東京で学んだ後、地元に戻って設計事務所を開設、介護施設などの建築設計を営んできた。両親の介護に向き合ったことで、建築業で培ってきた技術や経験を活かして理想的な介護施設を創ろうという思いになった。当初は介護サービスそのものには身を引いて臨んだが、始めてみるとすぐさま施設長として陣頭指揮をとっていた。それまでの設計事務所の従業員には独立を支援した。

 2007年に富山市四方に建てた「わごう一休庵」が、日本建築照明大賞を受賞。折しも介護保険制度ができた韓国の大学などから、行政を通じて見学が相次いだ。
 「就寝中も照明が直接目に入らないように、間接照明を心がけ、ベッドサイドを照らすようにしたり、天井を高くして高窓を作り自然光が取れる工夫をした」と長浜施設長。
 部屋は廊下をはさみU字型に配置するなど、スタッフが働きやすい動線を確保した。
 設計者として一番のこだわりは、何よりも清潔だった。「基本は換気と消毒。建物に換気システムを設けて、廊下側に排気が集中するようにした」という。コロナ禍になって、周辺施設でクラスターが発生する中で、この換気と消毒を重視したハードと取り組みによって、介護職個人に感染者が出たものの、利用者などに拡がることがなかったと長浜施設長はみている。

 消毒用アルコールやマスクは、コロナ前から、何が起きるか分からないという思いから、1年分のストックを持っていたことも良かった。マスクは、行政から配布された布マスクも合わせると、現在のストックは1万枚を超えると話す。抗原検査キットも準備し、感染の疑いがあると、セクション全員で調べた。
 「わごう」にはデイサービス、ショートステイ、小規模多機能。滑川市の事業所には富山県で2カ所目のサービス付き高齢者向け住宅(9室)がある。居宅介護支援事業所はなく、地域包括支援センターとの連携などで利用者を確保している。小多機の登録定員は29人。通い定員18人で、残り11人は訪問に注力する。ただ、「訪問介護とバッティングするので生活援助サービスはあまりできない」という。

売上の3割占める「地域交流」

 家族の訪問を促そうと始めた地域交流レストランだが、その評判メニューを配食サービスにまで拡げたのが良かった。見守りもセットされている。
 配食サービスは富山市(年10万食)と滑川市(年6万食)から委託を受ける。配達員は両方で20人(平均67歳)、いつもと様子が違うなど、異変を感じた時には家に上がる契約を結んでいる。配食を始めて10年になるが、これまで救急車を呼ぶ事態もあったという。

 課題は介護人材の確保と脱コロナ禍。従事者は全員で116人、うち正社員40人、介護福祉士16人、看護職8人の体制。「募集をしてもなかなか集まらない」と副施設長の笹川麻衣子さん。今後外国人介護職の確保も検討していく。
 売上は月3200万円。地域交流のレストランと配食サービスが3割を占める。「コロナ対策はできたが、スタッフに利用者を増やしたくないという気持ちがでて、介護部門の売上が下がったのが気がかり。職員の処遇改善のほかにも、築16年になる建物のメンテナンス費用もかかる」と長浜施設長は懸念を示す。

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