生き活きケア

生き活きケア(113)池上長寿園(東京都大田区)

生き活きケア(113)池上長寿園(東京都大田区)

 社会福祉法人池上長寿園(東京都大田区、橋本満昭理事長)は養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、デイサービス、定期巡回サービスなど、全33カ所を運営している。同法人では、キャリアパスを明確に示し、求職者や職員のキャリアデザイン構築の支援をしている。また、職員が自主的に学び合う取り組みも盛んだ。

役職を7段階の「仕事級」で分類

 同法人では、役職ごとに独自に7段階の「仕事級」を設け、「どのような仕事を行うか」「必要なスキルは何か」を示したキャリアパスを作成している。職層に合わせて、求められる資格や研修を設けており、職員のキャリアデザイン構築を手助けしている。例えば、チーフリーダー・副所長は5級に該当し、必要なスキルは「施設の目標達成に向け貢献し、成果を挙げること」、そのために想定される研修は「評価者研修」や「コーチングトレーニング講座」となっている。役職に就いていない職員については1級から3級まであり、上司の指示のもと業務ができること、指導ができるなどが級により示されている。

 経営本部人財課長の大川直人さんは「最近では、介護という職種が一般化し、求職者の志望動機や働く意義が多様化している。多くの職員にこの法人で働き続けたい、向上したいと思ってもらうために、明確な基準を設けることが重要だ」とキャリアパスを示すことで職員の将来の展望やキャリアデザイン構築を考える際に支援することができると説明する。このキャリアパスは同法人の人事評価指標として使用され、給与にも反映される。

 「成長意欲を持てるよう職員を支援することも法人の役割。職員が知識や技術を身に付け、地域が求めるニーズを解決することでいいサービス提供に繋がる」と大川さん。育成支援として、資格を取得した際の受講料や受験料などの費用助成を行っている。

 大川さんは人材確保・育成・定着はセットであり、どれが欠けても、人材問題は解決しないと指摘。同法人では実現に向けて▽生き活きと働くことができる職場環境の整備▽専門性を高め、誇りを持って働くことができる職場の構築▽共に学び、教えあう職場風土の醸成――を掲げている。

知識活かした、職員主体の研修

 同法人では、介護職向けの研修のほか、人材育成やマネジメント力を鍛える「アクティブラーニング研修」を独自で行っている。法人が指名した職員に対して、テーマを与えて研修や事業の企画立案から実施までを職員自身が行う。「法人の取り組みに職員自らが関わり事業を築き上げることで、仕事に対してやりがいを感じてもらいたい」と大川さん。

 現在は、職員で東京都の認知症介護研修の講師も行っている、根本俊弘さんと中村亜紀子さんが「アクティブラーニング研修」の一環として新人職員向けの認知症ケア研修を開催している。月に1回開催し、今年に入社した職員10人が参加している。参加者の勤務施設はそれぞれ異なり、月に1回各施設から集合している。 根本さんは「研修に参加し、認知症について学ぶことはもちろん、新人同士横の繋がりができていることが大きい。定期的に集まることで悩みを言い合える関係になり、また、私たち講師に対しても先輩として相談し答えられる関係を築きたい」と話す。また、「自身の経験を部下に伝えていくことが私たちの使命。それが法人の人材育成にも繋がっている」と根本さんと中村さんは口を揃える。

 大川さんは「都で講師として活躍している力を活用できないことは、職員だけでなく利用者にとってももったいないと思い指名した。働いている職員の能力をきちんと把握し、活かしていきたい」と語った。

(シルバー産業新聞2016年9月10日号)

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