未来のケアマネジャー

特定事業所加算(A)に込めたメッセージ/石山麗子(連載26)

特定事業所加算(A)に込めたメッセージ/石山麗子(連載26)

 2021年度介護報酬の単価が公表された。居宅介護支援は基本報酬、特定事業所加算の単位アップに加え、通院時情報連携加算が創設されるなど経営改善に資するものばかりだ。居宅介護支援(以下、「事業所」という)に従事する方の多くは、さぞホッとされているだろう。

 解釈通知やQ&Aはまだこれからだが、大枠が見えたいま、向こう3年間の私たちの在り方に何を求められているのか一緒に考えていきたい。居宅介護支援の報酬にはどのようなメッセージが込められているのだろうか。今回は特定事業所加算(A)に焦点をあてて見ていきたい。
 21年度報酬改定を眺めてみると10年以上厚生労働省が掲げてきた方向性と一見して異なると思われるものがある。特定事業所加算(A)(以下、「特定(A)」という)の新設である。

 これまで厚生労働省が掲げてきた特定事業所加算の方向性は、事業所に複数の主任介護支援専門員と介護支援専門員を配置し規模を拡大すると同時に複数の要件を満たすことにより質の高い「組織」を作り地域をリードしていく事業所を増やしていくことである。その方針は今も変わらない。21年度改定では、特定事業所加算Ⅰ、Ⅱ、Ⅲに繋がる補助階段となる「特定(A)」をつくった、という印象だ。

 現行の告示では、特定事業所加算を算定するために少なくとも3人以上の介護支援専門員を配置しなければならない。一方で人口の少ない地域では必ずしも事業所の規模は大規模である必要はない。老健事業で行った全国調査によれば事業所の平均人員数は2.7人、それに対し特定(A)は、2人プラス非常勤(兼務可)で算定可となっている。つまり全国の平均的な事業所規模があれば、あとはその他の要件を満たせばよい。
 居宅介護支援の報酬、プラス改定の理由を「経営実態調査でマイナス幅が拡大したため、多くの事業所に加算を算定してもらって経営改善を目指すため」という側面で捉えている人は意外に多いようだ。「特定事業所加算の算定=経営改善」という印象は定着している。だが、それは違う、ということを明確に申しておきたい。特定事業所加算の目的は、質の高いケアマネジメントを展開する事業所運営を通じ、利用者と地域に貢献することである。その条件を満たすべく努力し運営している事業所は加算が算定でき、結果として経営も改善されるということだ。

 また綺麗ごとばっかり並べ立てて、とみる方もおられるだろう。しかし手段と目的を取り違えている事業所の地域の評判はどうであろうか。何ごとにおいても、物事に対する構えは重要で、歳月を経るにつれ差は歴然としたものになる。歴史ある一流の会社の多くをみれば、行うべき使命を当たり前のこととし当たり前に行おうとする組織という点で共通性がある。
 話を特定(A)の算定に戻そう。全国の平均的な規模の事業所が、特定事業所加算の算定要件を満たす活動を実現した時にはどのような姿になるだろうか。多くの事業所が算定可能となり、全国のケアマネジメントの質の水準は今よりも高まるだろう。つまり多くの事業所のケアマネジメントの質を高め、地域と繋がる活動を通じて地域貢献してほしいというメッセージである。

 もう一つのメッセージは、「組織」として活動しましょう!ということである。現在の居宅介護支援事業所の事業運営の実態をみると、個々のケアマネジャーが各々業務を行う個人の集合体となっているところもあるようだ。個々に行う業務では、事業所内でのケアマネジャー間の連携は少なく代替性に欠け、判断と資質の偏り、業務の非効率性が目立つ。特定事業所加算の算定要件は組織として活動しなければ満たしにくい。特に特定(A)は他の事業所との連携でも可とされている。真の事業所間連携とは、各々の事業所の業務の組織化が進んでこそ可能となる。

 振り返ればこの数年、多職種連携が強力に推し進められてきたが、本来同職種間連携のベースがあってこそ可能なことだ。もし全国の多くの事業所が特定(A)を算定できれば、事業所の組織化と、その地域での事業所間連携は促進されより多くの課題解決に繋がっていくだろう。

 特定(A)に込められたメッセージは3つある。①ケアマネジメントの質を高めましょう②その実現のために組織化=同職種間連携の方法を考え、編み出しましょう。そうすれば地域間連携にも通ずるでしょう③特定(A)という補助的階段をつかって特定Ⅲに進みましょう――ということだ。
(シルバー産業新聞2021年1月10日号)

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