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共働き夫婦の子の扶養認定基準/西谷直子(連載179)

共働き夫婦の子の扶養認定基準/西谷直子(連載179)

 厚生労働省から「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」という通知、いわゆる共働き夫婦の子の扶養認定に関する新基準が今年の4月30日付けで出ています。

 これまでは、共働き夫婦の子を健康保険法上の被扶養者にする場合、年間収入(当該被扶養者届が提出された日の属する年の前年分の収入)の多い方の被扶養者とすることが原則になっていました。しかし、夫婦共働きが当たり前になり、また夫婦間での収入差も少なくなって来ている昨今、年収がほぼ同じ夫婦の子について、夫婦各々の保険者間でどちらの被扶養者とするかを調整する間にその子が無保険状態になってしまうということが生じていました。それらを踏まえ、今回、新たに明確な認定基準が定められました。この新しい認定基準は2021年8月1日から適用されています。おおまかな内容は次のとおりです。

1.夫婦ともに被用者保険の被保険者の場合

(1)被扶養者の人数にかかわらず、被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだもの。以下同じ)が多い方の被扶養者とする。

(2)夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。

(3)夫婦の双方またはどちらか一方が共済組合の組合員であって、その者に対し被扶養者に係る扶養手当またはこれに相当する手当(以下「扶養手当等」)の支給が認定されている場合には、その認定を受けている者の被扶養者として差し支えない。扶養手当等の支給が認定されていないことのみを理由に被扶養者として認定しないことはできない。

(4) 被扶養者として認定しない保険者等は、当該決定に係る通知を出す。

2.夫婦の一方が国民健康保険の被保険者の場合

 被用者保険の被保険者については年間収入を、国民健康保険の被保険者については直近の年間所得で見込んだ年間収入を比較し、いずれか多い方を主として生計を維持する者とする。

3.主として生計を維持する者が健康保険法に定める育児休業等を取得した場合

 当該休業期間中は、被扶養者の地位安定の観点から特例的に被扶養者を異動しない。ただし、新たに誕生した子については、改めて前記1または2の認定手続きを行う。

4.年間収入の逆転に伴い被扶養者認定を削除する場合

 年間収入が多くなった被保険者の方の保険者等が認定することを確認してから削除する。

 なお、収入に関し、夫婦双方の年間収入を確認する場合において、新型コロナウイルスワクチン接種業務に従事する医療職の方の収入の取扱いに時限的特例があり、「21年の新型コロナウイルスワクチン接種業務については、例年にない対応として、期間限定的に行われるものであり、また、特にワクチン接種業務に従事する医療職の確保が喫緊の課題となっているという特別の事情を踏まえ、医療職がワクチン接種業務に従事したことによる給与収入については、収入確認の際には収入に算定しない」とされています。

 収入確認の特例の対象者は、ワクチン接種業務に従事する医療職(医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士及び救急救命士)で、対象となる収入は、21年4月から22年2月末までのワクチン接種業務に対する賃金です。

 また、年間収入の考え方も変更されていますので、ご注意ください。
(シルバー産業新聞2021年8月10日号)

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