在宅栄養ケアのすすめ

安心して外食するために/中村育子(連載72)

安心して外食するために/中村育子(連載72)

 皆さんは「摂食嚥下関連医療資源マップ」(http://www.swallowing.link/)をご存じでしょうか? 嚥下内視鏡検査や嚥下造影といった口腔機能の診断や、嚥下訓練、訪問対応などが可能な医療機関を検索できるサイトです。

 皆さんは「摂食嚥下関連医療資源マップ」(http://www.swallowing.link/)をご存じでしょうか? 嚥下内視鏡検査や嚥下造影といった口腔機能の診断や、嚥下訓練、訪問対応などが可能な医療機関を検索できるサイトです。マップ上で場所も確認できます。もし噛む・飲み込む力が低下、また気になる場合は、こうした医療機関で一度、専門的検査やアセスメントを受けてみることをおすすめします。

 このサイトのもう一つの特長が、嚥下食の提供が可能な飲食店を掲載していることです。12月時点で登録店舗は全国63カ所と決して多くはありませんが、対応可能な嚥下食のレベルや、店内外のバリアフリー環境などの情報が閲覧できます。ANAや東京ディズニーランドも登録されています。普通食だけだと食事が難しい人にとって、外食での食事はやはり不安があると思いますので、こうした情報の事前確認はとても大切です。資源マップに登録しているお店でも、嚥下食メニューは事前予約が必要なところも多いですので、できればお店に直接連絡し、不安要素を解消しておきましょう。

①メニューの確認
まずは「何が食べられるか」です。普段家で食べているもの、どう調理しているかなどを伝え、同様の対応もしくは既存のメニューがあるかを聞きます。
「嚥下食」を標榜していなくても、例えばフランス料理のムースやテリーヌ、和食なら豆腐料理などは比較的食べやすいメニューです。また、お願いすれば少しやわらかめの調理や、小さめに切ってくれるお店もあるので、軽度の摂食嚥下障害の人であれば選択肢は割とあるかと思います。逆に、ゼリー・ペースト食などの対応まで難しい場合は、その部分だけ市販の介護食品の持ち込みが可能かなども聞いてみましょう。

②バリアフリーを確認
 車いすの人がレストランを予約して行ったところ、そこには階段しかなく、事前に車いすであることを伝えていなかったがために乗降介助も拒否、入店できなかったというニュースもありました。嚥下食への対応がきめ細かい店ほど、店内外のバリアフリー対応は基本的に整っているほうですが、念のため、テーブルに着くまでの動線を確認しておきましょう。たまにあるのは、出入口はスロープが設置されており、テーブルは車いすが十分入り込める幅・高さを備えているお店。一見、問題がないように思われますが、実は駐車場が砂利道になっていて、お店の入口までの移動が大変だったというケースを聞いたことがあります。その場合、一旦お店の前で降ろせる停車スペースがあるかなどの確認が必要です。そのほか、銀食器だと重くて使いづらい人に、食器の取り換えまたは持ち込みが可能かなど。
食事=外出支援に

 年末年始、クリスマスやお正月に、普段着ない服を着て、お化粧をして、家族と一緒に出かける。ちょっと贅沢なレストランで、少し形は違うけど、家族と同じ食事を共にする。
こうした「非日常」は、本人の外出意欲、ひいては生活意欲に大きく働きかけます。居宅療養管理指導で訪問しているグループホームでは、以前、全員で外食のバイキングに行ったそうですが、「好きなものを好きなだけ食べられる」という状況を作った結果、普段ホーム内で食べている2倍の量を食べた利用者もいたそうです。こうした食べる意欲・外出意欲を引き出すような場となる「嚥下食対応レストラン」がもっと増えていくことを期待します。
 中村育子(福岡クリニック)

(シルバー産業新聞2020年1月10日号)

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