在宅栄養ケアのすすめ

新加算、歯科連携の入口に

新加算、歯科連携の入口に

 24年介護報酬改定で、訪問系、短期入所系サービスに「口腔連携強化加算」が新設されました。介護職員等が口腔スクリーニングを行い、その内容をケアマネジャーと歯科医療機関へ報告することで、月1回50単位を算定できます。

 既に通所系サービス等には「口腔・栄養スクリーニング加算」が設けられています。口腔状態に関して①硬いものを避け、やわらかいものばかり食べる②入れ歯を使っている③むせやすい④特記事項(歯科医師等への連携の必要性)――を確認します。おそらく、口腔連携強化加算の評価項目もこれに近いものになるのではないでしょうか。

 評価力のバラツキなど不安な点もあるかもしれませんが、自宅へ頻回に訪問しているからこそ発揮できる観察力があると、私は前向きに捉えています。「いつもより食べにくそう、痛そう」「片方の歯でしか噛んでいない」など、生活の変化を捉えることが重要です。
 特に在宅は施設に比べ、口腔・栄養の専門職の関わりが比較的薄く、適切な食形態が判明していない利用者が多くいます。誤嚥による重度化、入院リスクを防ぐ取組としても重要な加算になるかもしれません。

 連携先の歯科医療機関に訪問歯科の算定実績を求めているあたり、その意図を感じます。在宅を熟知し、日々さまざまな医療・介護職と連携している歯科なら安心して任せることができます。嚥下内視鏡検査など、必要に応じて専門的な評価を行ってくれるところや、介護食に詳しい歯科医も在宅にはいます。口腔・栄養は密接な関係ですので、さらに低栄養(リスク)の抽出、管理栄養士と連携した在宅栄養ケアへと広がる期待もあります。
 私はこの加算のキーマンはケアマネジャーだと考えます。一つは、利用者負担を増やしてまで、この加算の必要性を判断できるか。もう一つは、訪問介護事業所等から受けた口腔評価の情報をどうケア全体に活かしていくかです。

 こんなケースがありました。パーキンソン病で摂食嚥下障害、仙骨部に発赤と褥瘡リスクもあり、訪問栄養に入りました。食形態は摂食嚥下リハビリテーション学会区分3(やわらか食・ソフト食)程度です。退院後間もなかったのですが、今の季節は病院より自宅の温度がかなり低くなりやすく、体調が不安定でした。感染症にも気をつけなければなりません。
 ある日、利用者の前歯のブリッジが外れたのをケアマネジャーが確認し、歯科へ相談に行きました。歯科医はブリッジを修理・調整すると判断し、それを預かりました。一見、普通の流れですが、問題だったのは、前歯がない期間、利用者はどうやって食事をするかを検討していない点です。

 食形態はどうするか。食形態が変わると家族介護者の負担も変わります。実際、食形態は学会区分2(ミキサー・ペースト)に落ち、ひとまず介護食品で対応しました。主介護者の奥さんは決して介護力が高くなくやせていて、普段から疲れも見えました。
 この場合、例えば①修理に必要な期間を確認②摂食・嚥下機能の再評価を依頼③最適な食形態の提供方法を相談――といった手順を踏む必要があったと考えます。ケアマネジャーがこの全体をコントロールできれば、在宅の職種連携はかなり円滑になります。

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