在宅栄養ケアのすすめ

「栄養スクリーニング」外部連携の出発点/中村育子(連載62)

「栄養スクリーニング」外部連携の出発点/中村育子(連載62)

 グループホーム(GH)は、昨年の介護報酬改定で「栄養スクリーニング加算」が新設されました。低栄養の気づきを促す目的で、体重や食事量などの定期的なチェック・報告が主な算定要件です。通所系や小規模多機能など、管理栄養士の人員基準がないサービスの多くに設けられています。

 スクリーニングの結果、低栄養もしくはその恐れがある場合、主治医や連携先、地域の管理栄養士等に相談し、早期予防・改善につなげるのが理想の形です。特に、GHの利用者は介護保険の居宅療養管理指導が算定できます。スクリーニング加算をきっかけに外部の管理栄養士に来てもらうことで、個別支援はもちろん、事業所全体の食支援のレベルアップにも生かすことができるでしょう。

 GHは管理栄養士だけでなく、医師や看護師、リハビリ職といった医療系職種の配置義務がありません。かと言って、利用者も9人(1ユニット)または18人(2ユニット)と少人数で、医療職配置のための人件費を賄うのも難しい。一方でGHの要介護度は年々高くなっています。おのずと外部の医療機関・介護事業所の協力が求められてくるでしょう。

 私が最近訪問を開始したGH(2ユニット18人)では、現在4人に居宅療養管理指導を実施しています。いずれも摂食嚥下障害で、2人はたんが飲み込めません。できるだけ食事またはおやつの時間に訪問し、食形態の均一化やとろみの調整などをアドバイスしています。また、指導にあたっては歯科にも外部から来てもらい、嚥下評価、さらに食事時のポジショニングについてもGHの職員に教えながら調節を行いました(写真)。

 ここも実は最初、食事観察で訪れたときには、摂食嚥下障害のある利用者へ職員が「カレースプーン」で食事介助を行っていました。一口量が明らかに多すぎて、誤嚥のリスクを高めます。しかし、こうしたことも指摘する人がいなければ、事業所のスタンダードとして行われている現場もまだまだ多いのではないでしょうか。

 なお、居宅療養管理指導の訪問は月2回(管理栄養士の場合)までですので、献立と利用者の体重に関する情報は逐一もらうようにします。

 もともと独居で、食事への興味が薄かった人の場合だと十分な栄養が摂れておらず、GH利用後はわりと短期間で体重が増えることもよくあります。ただ、ユニット全員の体重が増えているような場合は、エネルギー量が過剰な献立になっている可能性があるので、逆に注意が必要です。おやつを果物にするなどで対応します。

役割持たせ、 食べる意欲に

 GHでの食支援については、「家庭的な雰囲気の下でケアを行う」というサービスの特長を最大限生かしていくべきです。

 一つは、利用者全員で協力して食事を用意する、GH本来の機能です。重度化が進んでおり、感覚的ですが調理に関わることができる人は1ユニット1~2人ほどでしょうか。

 しかし、食事には▽メニュー考案▽材料の準備・調達(買い物)▽調理▽盛付け▽配膳・下膳▽食器を洗う・拭く――と何段階ものプロセスが存在します。また、「お茶を出すのが好き」という人もいます。これら個々のADLと意欲を踏まえた上で、役割を適材適所に与えることは、機能訓練としても必要なケアです。

 何より、作り立ての食事を、しかも自分が関わった満足感と共にいただくのは、食欲向上にも大きな意味を持つことになります。

 中村育子(福岡クリニック)

(シルバー産業新聞2019年3月10日号)

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