千田透の時代を読む視点

介護保険料、払い続けられる仕組みの構築を(千田透/連載91)

介護保険料、払い続けられる仕組みの構築を(千田透/連載91)

 4月から全国の自治体で第8期介護保険事業計画がスタートし、それに合わせて、1号被保険者が納める介護保険料についても見直しが行われている。現在は厚生労働省で全国の保険料の状況を集計している段階だが、報道などによれば、月額平均6000円を超える自治体が少なくない。

 昨年9月に発表された厚生労働省の介護保険事務調査によれば、18年度の時点で介護保険料を滞納したことで、保険者に資産を差し押さえられた人は1万9221人に上り、過去最多となっている。これから団塊の世代が本格的に介護サービスを利用していくことを考えると、保険料のさらなる上昇は避けて通れない。大事なのは、所得差などをきめ細かく見ていき、保険料を払い続けられる仕組みを構築していくことである。

 介護保険料の軽減策としては、15年度から所得の低い人の保険料基準額に対する負担割合を、第1段階は0.5倍から0.3倍に、第2段階は0.75倍から0.5倍に、第3段階は0.75倍から0.7倍に軽減する対策が取られたが、消費税の10%への引き上げが延期されたことで、実施が遅れた経緯がある。保険料が支払えず、必要な介護サービスが受けられない状況を政治が作ってはならない。

 介護保険料のもう一つの課題が、地域差の是正だ。たとえば、今回、東京都で最も保険料が高かった保険者は青ヶ島村の9800円。反対に最も低かったのは小笠原村の3374円。同じ東京都でありながら、保険料に6500円近くの差がある。もちろん、介護保険料は高齢化率やサービスの有無など、地域の実情を反映したものなので、差が出ること自体は問題ではない。しかしながら、島しょ部や中山間地域など、人やサービスが偏在している地域だと、国の財政調整交付金がうまく機能せず、保険料の格差が広がっている。保険料があまりに高くなったり、低くなったりすることがないように何かしらの措置を検討する必要があるだろう。

 高齢化の伸びとともに、介護保険料の全国平均は、制度施行当初の2911円から2倍の金額にまでなっている。これからも皆が保険料を払い続けられる仕組みにしていくには、所得差や地域差の「格差」を少なくしていくことが大事になってくる。それと併せて、たとえば、東京都稲城市が取り組んでいる介護支援ボランティア制度のように、高齢者の健康や生きがいづくりに取り組むことが、結果的に介護保険料の軽減につながるような仕組みを全国展開していくなどの発想も、制度に取り入れていく必要があるはずだ。

(シルバー産業新聞2021年5月10日号)

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