介護保険と在宅介護のゆくえ

休業要請想定し、緊急性高い利用者への備えを/服部万里子(連載97)

休業要請想定し、緊急性高い利用者への備えを/服部万里子(連載97)

 3月27日に国会で新年度予算が成立した。新型コロナウイルス感染症の感染拡大への対応があることから、3月6日に閣議決定された介護保険法改正の国会での論議が始まるには時間がかかりそうだが、厚労省での介護報酬改定論議は社会保障審議会介護給付費分科会で始められている。

 1月21日に日本で初めて新型コロナウイルスへの感染が確認されて2カ月余り。新型コロナウイルス感染者は、3月30日時点でチャーター機での帰国者、空港検疫での発見を含め1989人、クルーズ船の乗客乗員712人を合わせると2701人にのぼる。3月30日にはコメディアンの志村けんさんが亡くなり大きく報道されたが、新型コロナ感染症による死者はクルーズ船の乗客を含め70人となった。

 コロナウイルスは今まで6種の感染事例があり、03年にはSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した。今回は、今までにない型のウイルスで治療法がまだ確立できていない。高齢であったり、基礎疾患のある人、喫煙者などが重症化しやすいといわれている。

感染予防と「コロナうつ」に対応

 新型コロナ感染症への対策には地域差があり、それぞれの自治体の動きをとらえながらの対応が必要だ。訪問系・通所系サービスでは、職員が子供の学校休校対応などで不足しても、基準違反にはならずに介護報酬請求ができる。ケアマネジメントに関しては、サービス担当者会議の開催は電話や文書対応でもよい、月1回のモニタリングも利用者の状況により電話対応で記録しても、減算などにしないなど、対応が打ち出されている。

 利用者も高齢であり、多くはいくつかの疾患を持っており、不安におののいている。ケアマネジャーはまず、その不安を聞き、心理的・精神的落ち込みに向きあってほしい。花見もできない、外出もできない状況で「コロナうつ」になりかねない。前述の具体的な対応法を一緒に考え、感染予防を利用者ごとに実践していこう。その上で、通常の訪問系・通所系サービスを感染予防対策をとりながら提供することになるが、サービス利用を控えた場合には代行サービスが必要となる。

行政から休業要請が出た場合

 名古屋市のように、感染拡大防止の観点から介護サービス事業所に休業要請が行われることがある。この場合を想定して、ケアマネジャーは利用者のABC分析をしてほしい。災害対応と基本は一緒だ。それぞれの要介護度、独居、認知症、医療ニーズ、家族、近所との関係性など、状況は異なるが、Aランク(毎日から週に1回支援が必要)、Bランク(月に2回~3回くらい支援が必要)、Cランク(月に1回くらい支援が必要)に分類し、Aランクの中でも緊急性のある利用者から、具体的な支援を医療機関やサービス事業所、地域包括支援センターなどと検討しておこう。

 介護保険の見直し作業も動いている。3月16日に厚労省は介護給付費分科会を開き、報酬改定論議が始まった。特に、保険者の取り組み・成果に合わせて交付金を出す仕組みでは、自立支援・重度化防止の取り組みをより評価する方向だ。国は特養ホームの待機者が29万2000人いるとの理由で、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームの新設に補助金を出すことを打ち出した。財源は、医療介護総合確保基金で、国と都道府県の負担だ。

 また、小規模多機能や看護小規模多機能で、ショートステイ利用中の訪問診療の要件が緩和されるなど、新しい方針が打ち出されており、報酬改定議論の動向にも注目していく必要がある。

服部万里子(日本ケアマネジメント学会 理事)

(シルバー産業新聞2020年4月10日号)

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