住み替えを選んだ人のその後

犬と一緒に最期まで暮らせる有老ホーム「アプルール秦野」/栗原道子(連載18)

犬と一緒に最期まで暮らせる有老ホーム「アプルール秦野」/栗原道子(連載18)

 神奈川県に「犬と暮らせる有料老人ホーム」がある。県内で展開する有料老人ホーム「アプルール」は、藤沢市の鵠沼、鎌倉市の材木座と大船栗田、秦野市などにあるが、そのうち材木座と秦野は犬と暮らせるホームとして運営されている。

 運営会社は、その人が叶えたい夢をサポートし、活力ある生活を送れるようにという思いから、家族のように暮らしてきた犬と最期まで暮らせる住まいを考えた。愛犬と楽しく暮らすことができ、またホーム犬との触れ合いで癒しをという思いを込めたという。

 犬と暮らせるアプルール材木座、秦野はともに介護付き有料老人ホームで、入居者は最期まで(看取りまで)サポートを受けられる。主人が先立ち犬が残された場合、犬はそのままホームが面倒を見てくれる。

 今回は、秦野市にある「アプルール秦野」を訪問した。駅から徒歩20分の住宅地の中にある。訪問すると、事務室にはホーム犬として飼われる保護犬や、入居者の家族である小型犬が3匹迎えてくれた。ホーム内にかなり広い「犬の部屋」があり、ケージやサークルのほか、犬を洗うシンク、カットをする台などがある。この部屋は、おもちゃをくわえて遊んだり、お昼寝をしたりと犬が安心できる居場所だ。
 犬がいる他の施設で感じた「犬の臭い」はなく、清潔に気を付けているのがわかる。ドッグトレーナーの小野真理子さんは、「臭い対策に空気清浄機を導入しています。犬のシャンプーや毛のカットもこまめにしていて、日頃から清潔さを心掛けています」とのこと。

 犬と一緒に入居したい人は、入居の際に別途契約が必要で、▽成犬時に20㎏程度の中型犬まで▽入居者と一緒に居室で飼育する(秦野はホーム内の老犬ホームで預かることも可能)▽保健所が定める狂犬病、および予防接種は実施する▽集団生活や近隣との生活に適応できること▽避妊・去勢していること――などの決まりがある。

 現在は、居室で暮らしている犬3匹、ホームの保護犬2匹の計5匹がここで生活している。入院中の人の犬はホームが預かる。小野さんは犬の食事、シャンプーやカット、病院に連れていく、薬を飲ませる、ホームの庭のドッグランへ1日3回連れだし排泄や運動をさせる――などトレーナーとしての仕事が沢山ある。

 ドッグランに連れて行くときにはどの犬も自然に集まってきて、ドアが開くのを待つ。筆者も一緒に行くと、犬は慣れたもので芝生で遊んだり、休憩所で遊んだりと外の風が気持ちよさそう。ドッグランに続いて花畑や畑があり、野菜の収穫や花見物も楽しめる。スタッフで犬を飼っている人も、時々「犬連れ出勤」をするそうだ。

 秦野市では犬のいるホームは初めてだったため、市が許可してくれるまでには時間がかかったそうだ。ホーム犬として保護犬を譲渡してもらう際にも、保護犬を扱うNPOなどあちこち問合せをしたという。

 入居する人は、犬がいるホームであることを了承して入ってくる人がほとんどだが、犬は苦手という人には、ホーム側でも気をつけて何気なく遠ざけるなど配慮している。

 アプルールでは、食事をホームで作っており、毎月1日は赤飯の日(てんぷら、茶わん蒸し付き)、他にお寿司の日、肉の日、お誕生日のごちそうなどがある。食堂で晩酌もできる。

 買い物は、以前は各々自由に行っていたが、新型コロナ感染拡大以降は施設長の村岡則子さんが買い物代行をしている。以前は入居者で一泊旅行をしたり、ボランティアさんたちとの畑作業、フラダンス、カラオケなども楽しんだが、現在は面会も窓口で行うのみ。

 感染予防のため入居者の話を聞くことはできなかったが、犬が入居者のアイドルとして癒しになっていることは十分感じられた。入居者同士の話も制限されるコロナ禍に、犬や猫、植物などで癒やしを提供するホームの価値は大きい。
 【アプルール秦野】神奈川県秦野市平沢321-1、TEL0463・20・8550
 ▽居室:28㎡▽自立の場合:前払い金600万円(8年償却)、月費用19万8100円(管理費、食材費、電気代=税込)▽要介護の場合:420万円(5年償却)、月額19万8100円(税込)、ほかに介護保険自己負担とおむつ代、医療費など。
 前払金なしの月払い方式もあり、月費用は28万8100円(税込、自立の場合)。介護保険適用と自費の各ショートステイもあり。

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