シニア住まい塾

シニア住まい塾《117》 外国人と障がい者職員を育成

シニア住まい塾《117》 外国人と障がい者職員を育成

 前回、人材のダイバーシティ(多様性)を掲げている事業者として知られている、「介護付き有料老人ホーム・クロスハート湘南台二番館」(神奈川県藤沢市)のシニア職員の採用アイデアについてご紹介しました。今回は、同施設が外国人や障がい者をどう育てているのかをご紹介します。

 クロスハート湘南台二番館は、社会福祉法人伸こう福祉会の介護部門39カ所(特養、有料老人ホーム、グループホーム、小規模多機能型居宅介護、在宅介護事業、地域ケアプラザなど)の中の1つです。

言葉や文化の違いに配慮

 この法人は創業者の片山ます江氏が、神奈川県で受け入れていたベトナム難民をカトリック教会を通して雇用したのがきっかけで、現在も教会から外国人を紹介されています。また、横浜市福祉事業経営者会が定期的に開く外国人の就職説明会や、横浜市社会福祉協議会が開催する外国人向けの介護職員初任者研修を通して外国人介護スタッフが応募してきます。さらにすでに雇用している外国人スタッフが友人を連れてくる例もあります。

 クロスハート湘南台二番館で働いている外国人はペルー人、中国人、フィリピン人などが日勤で働き、ブラジル人数人は夜勤で働いています。外国人は明るく、気持ちがあたたかいなどで入居者に人気があるため、有山志津子施設長は積極的に面接をして就労へとつないでいます。

 すでに日本語の日常会話を会得している方ばかりですが、ケアの記録をつけるのはまだ難しいようです。それを補完するため、この事業所では、排泄や食事量、水分補給量などをバーコードで記録しています。外国人だけでなく高齢スタッフや未経験者にも有効で、記録作業量が減り、その分介護力に回せるようになりました。事故報告などは個別に違うので表現も難しく、それらは代理の職員が外国人ヘルパーから聞きとって記載します。

 雇用側として気を付けていることは、介護分野独特の言語の説明です。例えば「褥瘡」といっても意味が分からないので、褥瘡の原因や手当て、予防などを丁寧に説明します。また看取りは宗教によっては受け入られないこともあるので、無理強いはしません。

 夜勤ができる力量のある外国人ヘルパーは3人いますが、必ず日本人と組み合わせ、救急の対応も問題ありません。母国で看護師や介護士の資格をとって日本に来た方もいますが、日本では介護ヘルパーとして日本人と同じ時給で働きます。

 大きな特徴は、法人本部に外国人をバックアップする「国際担当」が設けられていることです。国際担当スタッフは、外国人材の採用や教育、定着に関する業務を行い、孤独感に襲われないように食事会やイベントも随時開催し、精神面でのフォローをしています。年に1回、英語やスペイン語、中国語の通訳付きで、介護保険制度や感染症などの研修を開催し、社内報の翻訳も行います。

 考え方の違いやその国の宗教感などが異なるので勘違いもあるそうです。介護保険のない国から来た人には、施設の利用料は介護保険給付を施設が代理受領して賄っていることがわかりません。突然「今日は休む」と言ってくる外国人には、介護保険の人員基準を満たさなければ介護報酬がもらえなくなる。そうなればあなたの仕事はなくなる――ということを事細かく説明し、納得してもらいます。外国人の平均在籍期間は3年8カ月で、最長勤務者は12年。日本人とそれほど変わりありません。
 「クロスハート湘南台二番館」は入居者80人で、職員は常勤・非常勤合わせて66人います。そのうち60歳以上のシニアが20人、それに外国人5人と障がい者1人を合わせて26人いて、全職員の40%を占めています。

 クロスハート湘南台二番館は、社会福祉法人伸こう福祉会の介護部門39カ所(特養、有料老人ホーム、グループホーム、小規模多機能型居宅介護、在宅介護事業、地域ケアプラザなど)の中の1つです。

発達障がいの人の受け入れも

 近年「発達障がい」という言葉がよく聞かれます。詳しくはわからないのですが、生きづらさをかかえて生きている人、という説もあります。この事業所では発達障がいの人を就労支援事業所からの紹介で雇用しています。決まった仕事はきちんとできますが、業務の中でイレギュラーなことが起きると混乱することもあります。

 雇用側としては、適宜休憩を入れる、話を聞く時間をつくる、相性のよいスタッフを同じグループに配置する――など工夫することで安定してきているといいます。さらに本部にはメンタル面を補う「24時間ホットライン」として、スタッフの気持ちを聞いてくれる部署があります。

 少しの工夫さえあれば、外国人や障がい者が介護施設でも働きやすい環境を作れることがわかりました。大きな法人だからできることなのか、中小の企業では難しくはないか、小さな事業所で外国人、障がい者を雇用してうまくいっている例がありましたら、「シニア住まい塾」までぜひお知らせください。取材して、この欄で皆様と共有させていただきます。

 シニア住まい塾=☎0466・35・8334

(シルバー産業新聞2017年2月10日号)

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