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ケアマネアンケート 物価高騰「利用者に影響出ている」73%

ケアマネアンケート 物価高騰「利用者に影響出ている」73%

 国際情勢の緊迫化などの影響により、電気・ガス等のエネルギー価格や食料品などの物価の高騰が続いている。これを受け、本紙では6月~7月にかけて全国のケアマネジャーを対象に「物価高騰の影響」についてアンケートを実施。97件の回答が得られた。調査の結果「居宅介護支援事業所の運営に関して、エネルギー価格や物価高の影響が出ているか」に「出ている」と答えたケアマネジャーは68%、「出ていない」は30%と多くのケアマネが自事業所について物価高騰のあおりを受けていると回答。また、「担当する利用者の暮らしに物価高騰の影響が見受けられるか」という問いに対しても「見受けられる」が73%と、多くの利用者の生活に影響を及ぼしている実態が浮き彫りとなった。

Q1.居宅介護支援事業所の運営に関する、エネルギー価格や物価高騰の影響について

 新型コロナウイルスの流行やロシアによるウクライナ侵攻、急速な円安の影響などから、電気・ガス・水道等のエネルギー価格や食料品をはじめとする物価の高騰が続いている。これらは介護業界にも波紋を広げ、業界団体が各自治体に要望書を提出するなどの事態となった。

 こうした状況に対し、政府は昨年度より、低所得世帯に向けた「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」の創設や、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」の用途を拡大し介護施設等の水光熱費や給食費への使用を認めるなど、事業所や生活者へのフォローを行っている。

 アンケートでは、まず、昨今の物価高騰による居宅介護支援事業所への影響の有無を尋ねたところ、「影響が出ている」と答えたケアマネジャーは68%、「出ていない」は30%、「その他」が2%と、半数以上が物価高騰の影響を受けていることが分かった。

 自由記述で具体的な内容を尋ねたところ、水道光熱費とガソリン代の高騰への対応に苦慮する声が多く届いた。「エアコン使用(温度設定など)に気を使うようになった」(栃木県、女性)、「電気代の節約を求められている」(宮崎県、女性)、「ガソリンの使用量に対して訪問時、効率よく回るよう施設から言われている」(栃木県、女性)など、事業所にとって必要不可欠なエネルギー価格の高騰に向き合い、試行錯誤して策に励んでいる。

 中には「月に2~3回訪問する必要がある方もいるが、1回で終了し、電話対応させていただく場合もある」(栃木県、女性)と、利用者へのサービス提供の形を変えることで出費を抑える意見もあった。

 その他には、「エネルギー価格の高騰や消耗品(紙や文具等)の価格の値上がりにより、諸経費が多くかかるようになった」(和歌山県、女性)、「まだペーパーレスではなく、コピー用紙等の物品が値上がりしている」(宮崎県、女性)、「電気代、デイサービスの昼食代、ペーパータオル、トイレットペーパーの代金等」(栃木県、女性)といった日用品等の諸経費や、さらに「賞与減額」(宮崎県、女性)と、ケアマネ自身も給与面で余波を受けていると訴えた。

Q2.利用者の暮らしに見受けられる物価高騰の影響について

 次に、担当する利用者の暮らしに物価高騰の影響が見受けられるかについて尋ねたところ「見受けられる」が73%、「見受けられない」が25%、「その他」が2%と、事業所よりも利用者への影響を感じているケアマネジャーが多い。

 「見受けられる」の具体例では、「卵などの栄養がある食品でも、高くなったので購入していないと言われていた」(宮崎県、女性)、「食材費が高いので、お腹を満たせない事がある」(栃木県、男性)、「生計の中心が食であるため、これは削れない様子。期限の過ぎたものを食べ体を壊す方もいる」(和歌山県、女性)と、食費の高騰やそれによる体調不良への心配が多く見てとれた。

 同様に利用者の心身の不調を案じる意見として、「食費、電気代が高くなった。クーラーの使用を控えているため、熱中症等が心配」(栃木県、女性)、「光熱費が上がり、節電をされ、エアコンの使用控えや室内の照明をつけずに過ごされている」(宮崎県、女性)、「年金で細々と暮らしている方が多く、精神的に追い詰められている感がある」(栃木県、女性)など心を痛める様子が表れていた。

 また、「施設管理費の高騰に伴い支払いできず退去する方や、在宅生活するにも生活費にお金がかかりサービスを受けたくとも制限せざるを得ない方がいる」(宮崎県、女性)、「介護にかけられる費用の減少により自己負担額がいくらになるのかを気にされる方が多くなった」(福岡県、男性)、「『食費を確保するために介護サービス費を2000円までに抑えてほしい』と要望があった。十分な支援を受けられない」(宮崎県、男性)など、生活がひっ迫している利用者はサービスの利用控えにも繋がる実態が見受けられた。

Q3.物価高騰に対する支援策について

 アンケートでは、物価高騰に対してケアマネが必要と考える支援策についても質問。

 「物価を上げるなら、それと同じに年金額を上げること」(和歌山県、女性)、「収入の少ない高齢者(生活保護を含む)への現金給付」(福岡県、男性)、「地域支援券のような形で自治体が予算を作って提供して欲しい」(栃木県、女性)など、利用者の暮らしを考慮した意見や、「介護事業所への支援金、助成金、交付金の継続」(栃木県、男性)、「居宅介護支援費や処遇改善加算の見直し」(宮崎県、女性)といった介護事業所自身への支援を求める意見などが寄せられた。


 アンケートは6月から7月にかけて行い、全国のケアマネジャー97人から回答を得た。※アンケートご協力ありがとうございました。
(シルバー産業新聞2023年8月10日号)

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