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施設の医療機関連携 協力先に緊急対応・入院受入れ義務化

施設の医療機関連携 協力先に緊急対応・入院受入れ義務化

 2024年介護報酬改定では、介護施設が定める協力医療機関の運営基準を強化。病状急変時の対応などを義務づけた。平時からの入所者の情報共有に対しては加算を新設。医療機関側にも往診、入院受入れ実績を診療報酬で評価するなど、連携双方のインセンティブをもって、より実効性のある医療連携体制の構築をはかる。

 施設系、居住系サービスの運営基準では、協力医療機関を定めることが位置付けられている(歯科医療機関は努力義務)。24年改定では、施設サービス(地域密着型特養含む)の協力医療機関について①入所者の病状が急変した場合等に、医師または看護職員が相談対応を行う体制を常時確保②診療の求めがあった場合に、診療を行う体制を常時確保③入所者の病状の急変が生じた場合等に、施設の医師または協力医療機関等の医師が診療を行い、必要に応じ入所者の入院を原則受け入れる体制を確保――を義務化(③は病院に限る)。3年間の経過期間を設ける。複数の医療機関を定めることで基準を満たしても良い。③は施設入所者専用の病床を確保する必要はなく、一般的に地域で在宅療養を行う者を受入れる体制でよい。

 協力医療機関との間では年1回以上、入所者の急変対応等を確認し、指定権者の自治体に協力医療機関名などを提出。また、入所者が協力医療機関に入院後、病状が軽快し退院が可能となった場合は速やかに再入所できるよう努める。(地域密着型)特定施設、グループホーム(いずれも介護予防含む)は③は求めず、それ以外を努力義務とした。

 基準改正の背景には、緊急時の連携体制が十分でない実態がある。厚生労働省の老健事業によると、特養の協力医療機関で緊急対応「あり」としている割合は23.2%。連携内容は外来診察の受入れ78.8%、入院受入れ60.6%に対し、緊急対応(施設の配置医師に代わりオンコール対応)は17.4%にとどまる。

 老健についても、夜間・休日に入所者が急変した際、往診対応が可能な協力医療機関の割合は、併設病院で43.8%あるものの、それ以外の同一法人・関連法人の場合は8.7%、他法人だとわずか0.9%となっている。

平時の情報共有に加算

 これらを満たす協力医療機関を定めた上で、入所者の現病歴等を情報共有するための会議を定期的に開催している場合、新たに「協力医療機関連携加算」(月100単位)が算定可能に(施設サービスの場合25年度以降は月50単位)。協力医療機関を定めていない場合は月5単位(居住系は月40単位)と報酬に大きく差を設け、より早期に連携強化を促す考えだ。

 会議では特に、協力医療機関へ診療の求めを行う可能性が高い入所者や新規入所者を中心に情報共有や対応の確認等を行うとし、必ずしも毎回入所者全員について行うことは求めない。また、基準に定める「入所者の病状が急変した場合の対応の確認」と一体的に行ってもよい。参加職種は問わないが、入所者の病歴等の説明、急変時等の対応の確認が行える者が出席することとしている。

 開催方法はオンラインも可。頻度はおおむね年1回以上で、電子的システム等で入所者の情報が協力医療機関と随時確認できている場合は年3回以上でもよい。ただし、複数の医療機関を協力医療機関に定めている場合、各医療機関と会議を行わなくてはならない。

 今回の連携強化については、医療機関側も診療報酬上で評価。協力医療機関に定めた医療機関の医師が、入所者の急変時に往診を行った場合、「介護保険施設等連携往診加算」(200点)を算定する。

 また、急変時に診療を行い、入院の必要性を認め入院させた場合は「協力対象施設入所者入院加算」(入院初日に200点。往診を行った場合は600点)を算定する。
(シルバー産業新聞2024年4月10日号)

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