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認知症施策「神戸モデル」 自己負担ゼロで診断・賠償

認知症施策「神戸モデル」 自己負担ゼロで診断・賠償

 神戸市は昨年4月に「神戸市認知症の人にやさしい街づくり条例」を施行した。それに伴い、今年4月から65歳以上の市民を対象に、「認知症診断助成制度」と「認知症事故救済制度」がスタートした。

予防 ・ 早期発見へ

 条例は、17年9月に市で開催されたG7保健大臣会合で認知症対策をより推進することを盛り込んだ「神戸宣言」の採択が契機となった。

 1月に先行して始まった「認知症早期診断助成制度」では認知症の有無と病名を診断する。

 市民はまず、認知症の「疑い」の有無を診断するための「認知機能検診」に申込む。郵送、FAX電話、インターネットから申込め、本人の同意を得た家族やケアマネジャーからも受付ける。

 診断には長谷川式簡易知能評価スケールと、同市が独自に作成した2種類の問診票を用いる。長谷川式では記憶や曜日回答のテストから認知機能を点数化。合わせて、睡眠状況や知覚障害など、BPSD(認知症周辺症状)に関する問診と、1人で買い物が可能か、食事の準備は可能かなど21項目から生活への影響を点数化したものから総合的に診断する。

 1月から受付けが始まっており、3月末時点で1,578人が受診。そのうち3割に当たる500人が「認知症の疑いあり」と診断された。

 「認知症は加齢とともに変化する可能性がある。『疑いなし』と診断されても1年後に再受診してほしい」と認知症対策担当の土井池良夫係長は強調する。

 なお、申込は6月上旬までに8,797人となっている。

病名を知るために精密検査

 「疑いあり」と診断されると、受診した医療機関で紹介状を受取り、より専門的な医療機関で受診ができる。CTやMRIの画像検査、認知機能の状態を計測する神経心理検査等を行う。

 3月末時点で169人が受診し、6割の109人が認知症、2割の38人がMCI、22人が認知症ではないと診断された。認知症の場合、病名もわかる。

 また、MCIと診断されると、半年後にもう一度受診できる。

 対応している医療機関は検診が378カ所、精密検査が64カ所。いずれも自己負担なしで受診可能だ。

 市では今後、専門相談窓口や認知症サロンの開設、見守りヘルパー事業を開始し、認知症診断後の切れ目ない支援を推進する。

見舞金と賠償保険で事故をカバー

認知症と診断されると、事故救済制度に申し込むことが可能になる。

 事故救済制度は2種類。「見舞金制度」は、認知症と診断された人が起こした事故で「被害にあった市民」に支給する。認知症であるために家族共に賠償責任なしと判断された際の救済制度だ。

 死亡・後遺障害に対して最大3,000万円のほか、物損に対して10万円が支給される。また、事故を起こした市民にも被害者見舞費用として最大10万円が支給される。

 「賠償責任保険制度」は認知症と診断された市民が事故を起こし、家族も含め賠償責任が発生した場合に最大2億円が補償される。また、事故を起こした認知症の人が死亡・後遺障害が残った時に最大100万円が支払われる。

 過去に認知症と診断された人も対象で、6月時点で2,000人が加入。いずれも市が保険料を負担する。

 ただ、今回の制度で対象者の負担ゼロを実現するためには年間3億円が必要。そこで均等に負担してもらう市民税を年間400円増税することで対応した。同氏は「今の制度に対する負担を将来に回すのではなく、今の市民が負担する形で進めたいと考え増税に踏切った」と述べた。

(シルバー産業新聞2019年7月10日号)

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