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介護のエビデンス構築へ 栄養・認知症などデータ収集

介護のエビデンス構築へ 栄養・認知症などデータ収集

 厚生労働省は10月12日に「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」(座長=鳥羽研二・長寿医療研究センター理事長)を初会合した。栄養や認知症、ケアマネジメント等に関する介護サービスの効果(エビデンス)を収集・分析し、介護の質の見える化をめざす。質の底上げとともに、自立支援へのインセンティブとして介護報酬上の評価も視野に入れる。

20年データ収集開始へ5分野検討

 科学的介護検討会は、安倍晋三首相が議長を務める未来投資会議で掲げた「自立支援・重度化防止に向けた科学的介護の実現」に基づき発足。既存のエビデンスの整理を行うとともに、今後のエビデンス蓄積へデータ収集すべき情報を検討する。

 この日の初会合で、同省が各論にあげたのは①栄養②リハビリテーション③主にケアマネジャーによるアセスメント④ケアマネジメント⑤認知症――の5分野。情報収集にあたっては介護現場に過度な負担を与えず、誰もが簡易的に行えるものとし、血液データなど医療職が必要なものは除外される。また、負担軽減の観点から、サービス提供上、運営上ですでに把握しているデータの利用、ICTの活用も検討するとした。

 対象は介護サービス事業者で、データ収集は早くて2020年から。その進捗・結果は介護報酬等を議論する社会保障審議会介護給付費分科会にも適宜報告される。したがって、エビデンスが出る時期次第では、21年報酬改定での議論に上る可能性も十分に考えられる。

 また、既存のエビデンスについては老健事業等の調査結果を整理し「必要に応じて18年改定で検討する」と説明。この日示したエビデンスの例では、通所リハビリの「生活行為向上マネジメント」によるADL・QOL等の改善や、通所介護でリハビリ職の有無による歩行機能の違いなど、現行報酬で評価されているものもあり、分野としては機能訓練・リハビリに関する項目が多くを占めていた。

 委員からはデータ収集の項目について、「介護での自立支援には本人の希望や生きがいも重要。自己決定や、個別性が逸脱しないよう配慮を」(八木裕子・東洋大学准教授)や、「統計処理しやすい項目に偏らないように。例えば、認知症の人の表情変化をどう科学的に示すか。画像データをとるための手法などを考えなくてはならない」(伊藤健次・山梨県立大学准教授)など、身体機能以外の項目を十分踏まえるべきとの意見がより多かった。

栄養項目には体重・食事観察など

 26日に開催した第2回では、栄養をテーマに①利用者の状態②ケアの介入③リスク等のイベント――に関する項目案を提示した。

 各項目には、記録内容や測定方法・頻度、情報ソースの他に「仮説の例」を記載。例えば利用者状態の「身長・体重・BMI」では、体重の測定頻度は月1回、情報ソースはケア記録や栄養アセスメント記録とし、仮説の例を「BMIが20㎏/㎡以下の場合、1日200㎉の補食(間食)を摂取することで、月0・5kgの体重と上腕周囲長などを増加させることができる」としている。

 また、「ケアの介入」にあがった「食事の観察(ミールラウンド)」では、月1回の定期的なミールラウンドにより食事に関する問題点を明確にできることや、誤嚥性肺炎や窒息リスクの抑制につながることが仮説の例とされている。

 ただし、利用者状態に関しても、基本的な項目もあれば、「上腕周囲長」や「上腕三頭筋皮下脂肪厚」など普段はチェックしていない専門的なものも含まれていることから、オブザーバーとして出席した全国老人保健施設協会副会長・折茂賢一郎氏や全国老人福祉施設協議会理事・瀬戸雅嗣氏からは、現場でのデータ収集への負担が大きいとの指摘も。これに対し同省は「あくまで現時点で考えられる項目の最大数を出した」と説明し、引き続き検討するとした。

 同じくオブザーバーの日本医師会常任理事・鈴木邦彦氏は「栄養介入後の状態は、リハビリとの関連も大きい」と強調。栄養単体ではなく、リハビリと共通した項目も必要との意見を述べた。

 各論については主に年内に検討し、年度末までに中間とりまとめを行う。

(シルバー産業新聞2017年11月10日号)

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