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社会福祉法人埼玉県共済会 救貧・防貧から介護まで地域に根差した1世紀

社会福祉法人埼玉県共済会 救貧・防貧から介護まで地域に根差した1世紀

渋沢栄一の支援を受けて発足

 当法人は、1918年(大正7年)に勃発した米騒動をきっかけに、当時、埼玉県知事だった岡田忠彦氏が独自の救済事業機関の設立を考えたことが始まり。岡田知事は、慈善救済事業に造詣が深く、埼玉県出身でもあった渋沢栄一氏に教えを請い、翌年に財団法人埼玉共済会を立ち上げた。初代会長は岡田知事で、渋沢氏を顧問に迎え入れた。当時は、貧病者の救護、肺結核の救済、生業資金の貸し付け、家庭内職のあっせんなどを行っていた。名称変更などの変遷を経て、社会福祉事業法が制定された翌年の52年(昭和27年)に埼玉県同胞援護会支部と合併し、社会福祉法人埼玉県共済会へ改組した。

介護保険以降は、収益性の確保も課題に

 2000年4月の介護保険制度施行にあたっては、居宅介護支援事業所の開設、居宅サービスの利用者の円滑な移行や新規利用者の受け入れなどに取り組んだ。長い歴史の中で、地域とのつながりも深く、運動遊園の設置、夏祭りなどの地域交流、地区社協が行う地域福祉行動計画の策定や配食サービスへの支援などを実施してきた。

 一方、事業経営では厳しい面もあった。措置時代の運営が長く、社福法人として公正で安定した事業運営に努めてはいたが、介護保険が始まり、さまざまな法人が参入する中で、利用者獲得の競争に勝ち抜くという意識が率直に言って足りなかった。

 収益性を高めるために、市内で不足していた老健や通所リハを開始し、在宅から老健・通リハ、そして特養という一貫したサービス提供体制を整備した。また市からの委託で地域包括支援センターの開設や、養護老人ホームでは特定施設入居者生活介護の指定も受けた。そのほか、保険外サービスも手掛けてきた。

深刻なヘルパー不足、養護の特定施設指定を廃止

 目下の課題は①新型コロナ対応②人材確保③物価高騰下などでの事業経営――の3点。①新型コロナ対応では、陽性者が発生すると感染拡大の防止、職員の補充などに追われる。法人内で調整ができるのが救いだが、施設と居宅サービスが同一建物にあるため、施設で起きた感染が居宅サービスに影響を及ぼすこともある。サービスの継続に最大限努めてはいるが、やむなく休止せざるを得ない場合もあり、心苦しい思いをしている。

 ②人材確保は、あらゆる職種の確保が年々難しくなっている。特にヘルパーは募集しても集まらない状況が長く続き、昨年は養護老人ホームの特定施設の指定を廃止した。地域の在宅要介護者へ訪問介護を提供するための判断だ。養護老人ホーム入所者は支援員を増員し、ヘルパーは地域へのサービス提供により注力できる体制に切り替えた。処遇改善加算などにより、介護職員の賃金が引き上げられる一方、対象にならない居宅介護支援事業所や地域包括支援センターのケアマネジャー確保も難しくなっている。

 当法人では、20年度以降、賃金体系の見直しや定年の引き上げ、人事評価制度の導入、資格取得の費用支援や表彰制度の充実など、さまざまな取り組みを展開してきた。正職員のおよそ半数、非常勤では8割以上が50代以上と職員の高齢化も進む。若年層の職員の確保も不可欠だ。

 ③物価高騰下での事業経営は、半年の法人全体の水光熱費が、昨年と比べて700万円増とほぼ倍になっている。経費削減計画を策定し、CSRやBCPの視点も含めて、地下水ろ過システムや太陽光発電システムの導入などを検討しているところだ。

 こうした不安定な要素が多い介護分野では、現状、事業拡大に舵をきることは躊躇される。現行の事業の安定継続に力を注ぎながら、地域協働の体制づくりを進めていくことが、長く地域に根差した当法人のあり方のように思える。ただ、地域のために何ができるかを追求し続ける姿勢は崩さない。コロナ禍で歯がゆい状況が続くが、これからも住民の幸福感や安心感向上のために、法人の役割を見つめ、果たしていきたい。(談)
(シルバー産業新聞2023年1月10日号)

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