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上限価格見直し 19年度実施せず

上限価格見直し 19年度実施せず

 4月10日、社会保障審議会介護給付費分科会(座長=田中滋・埼玉県立大学理事長)は、福祉用具貸与価格の上限設定について、「19年度中の見直しは行わない」とする厚労省の対応案を了承した。

 「19年度以降もおおむね1年に1度の頻度で見直しを行う」とした18年改定だったが、「施行後の実態を踏まえつつ、実施していく」との補足の記述を踏まえ、今回の対応になった。ただし新商品については、今年度中も上限設定を行う。来年度以降は今年度実施される介護報酬改定の効果検証の結果を踏まえて検討される。

影響の精査へ

 昨年10月に導入した上限価格制は、当初の予定では19年度以降も1年に1度見直しをすることが決まっていたが、4月10日開催の介護給付費分科会で厚労省は、上限価格制により高額な保険請求自体が排除されていることや、福祉用具貸与事業所の業務負担増、収益減少が大きいことなどを理由に、上限制の影響を精査する必要があるとして、19年度中の見直しは行わないとする方針を示した。

 委員からは、「上限価格の見直しは事業者の事務負担が大きい」(老施協)、「当初の目的である外れ値はほぼなくなった」(全老健)、また日本労働組合総連合会や老人クラブ連合会からは事務局案に賛意を示しながらも「ルール化をすべき」との意見が出され、事務局案は承認された(囲み「審議状況」参照)。

上限超過の現状

 国はまず、上限制導入の目的であった外れ値の解消について、「上限設定により、高額な保険請求は排除されている」との見解を示した。
 その上で、18年度介護報酬改定の効果検証結果を示し、上限制の財政削減効果を、18年10月の1回目は2.0%減(4.5億円減)になったと報告した。しかし、上限価格見直しの2回目以降については、2回目0.7%減、さらに3回目0.3%と、削減効果が1回目の3分の1、7分の1に縮小するシミュレーションを示した(グラフ1)。
 その一方で、福祉用具貸与事業者の74%が「収益が減少した(見込み)」と回答。カタログの価格修正や再印刷の発生、事業所内システムの改修作業の発生など、事務負担・経費負担が増加しているとして、影響を精査する必要があるとした。

 また、上限価格を超える商品を1つでも利用している者の割合は、上限設定1回目では25.5%だったのが、2回目29.6%、3回目33.4%と増加していくシミュレーション結果も。財政抑制効果が減少する一方で、事業者負担が拡大していくとの見解を示した(グラフ2
 利用者調査においても、上限制によってサービスの変化があったとする回答は、上限価格を超えた商品の利用者では2.7%、超えていない利用者では0.9%あったが、自由記載の回答では「訪問頻度の減少」や「訪問時の時間短縮」など、上限制の対応に迫られた結果、貸与事業所のサービス低下が見られるものだった(表1)。
 20年度以降の対応については、19年度の改定検証調査において、継続的に貸与価格の実態や経営などへの影響を実施して検討される。

 新製品の上限設定については、当初方針通り、19年度以降、月平均100件を超えた場合、3カ月ごとに上限設定を行う予定。4月24日、新たに419商品が厚労省、テクノエイド協会のホームページで公表されている。
(シルバー産業新聞2019年5月10日号)

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