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特養▲1.0%、老健▲1.1で初の赤字 22年度決算収支差率2.4%

特養▲1.0%、老健▲1.1で初の赤字 22年度決算収支差率2.4%

 厚生労働省は11月10日、2023年度介護事業経営実態調査の結果を公表した。22年度決算の全サービスの平均収支差率は、前年度より0.4%減の2.4%。特に施設系、居住系サービスでの悪化が顕著で、特養と老健は制度創設後初めて収支差率がマイナスになった。一方、訪問系サービスはおおむね改善し高い収支差率となっている。

 介護事業経営実態調査は次期報酬改定の基礎資料として、各サービスの経営状況を把握するのが目的。今回は約1.6万事業所から回答を得た。

 収入に対する利益率を示す「収支差率」は全サービス平均で2.4%。22年度経営概況調査(21年度決算)の2.8%から0.4%悪化した。感染予防等に係る設備・消耗品等の費用を補助するコロナ関連補助金や、物価高騰対策関連補助金を含む場合の収支差率(税引前)は3.0%で前年度から横ばいだった。

 経営概況調査は今年2月に公表。その時も収支差率は報酬改定前の20年度から0.9%減だったことを踏まえると、今回の結果は、21年報酬改定前から2年間で1.3%下がったことになる。22サービス中、収支差率が前年度より悪化したのは11サービス。なかでも特養は▲1.0%(前年度比2.2%減)、老健は▲1.1%(2.6%減)で、ともに介護保険制度創設以降初めてのマイナスとなった。コロナ関連補助金等を含む場合(税引前)は特養0.1%、老健0.0%とかろうじてプラスに転じる。

 介護医療院は0.4%で前年度比4.8%の大幅減、地域密着型特養も▲1.1%(2.2%減)で赤字に。施設サービスの厳しい経営状況が浮き彫りとなった。特定施設2.9%(1.0%減)、グループホーム3.5%(1.3%減)と、居住系の悪化も著しい。

給与費増が経営を圧迫

 同期間での収入に対する給与費の割合を見ると、特養65.2%(前年度比0.9%増)、老健64.2%(2.0%増)、医療院62.1%(2.3%増)といずれも高い。特養の1施設あたりの月平均収入は2836万円で前年比50万円(1.8%)増だが、給与費はそれを上回る57万円(3.1%)増。常勤換算職員1人当たり給与費(賞与含む)は37.1万円から39.1万円へアップしている(表2)。物価高騰が収益を圧迫する中でも、処遇改善の継続に取組む現場の実情がうかがえる。

訪問系は比較的安定

 収支差率が最も高かったのは定期巡回・随時対応型訪問介護看護の11.0%(2.9%増)。施設系とは逆に、給与費割合は5.1%減の73.4%となった。1事業所あたりの月収入は9.2%減ながら、給与費1.4%減が影響している。

 また、定期巡回サービスの収支差率を利用者人数別に比べると、10人以下の事業所では▲4.8%に対し、41人以上では18.2%と、規模に応じて経営状況が改善していく実態も見てとれる。

 訪問介護は7.8%(2.0%増)、訪問看護は5.9%(1.3%減)。前回の経営概況調査でマイナスだった訪問リハビリも9.1%(9.5%増)と大きく回復するなど、訪問系サービスはおおむね平均を上回る収支差率を維持。過去赤字続きだった居宅介護支援は20年度決算を期にプラス転換を果たし、22年度は4.9%(1.2%増)だった。常勤換算職員1人あたりの実利用者数は36.9人から40.2人に伸びている。

 一方、通所系は通所介護1.5%(0.8%増)、地域密着型通所介護3.6%(0.5%増)、通所リハビリ1.8%(2.1%増)と、伸びは小幅にとどまる。

 同調査結果を報告した16日の社会保障審議会介護給付費分科会では、施設系の事業者団体から報酬増を求める声が相次いだ。

 全国老人福祉施設協議会の古谷忠之参与は「もはや施設の経営努力では限界。基本報酬、従事者の処遇改善、食費・居住費の基準費用額の大幅な増額が必要だ」と強調した。
全国老人保健施設協会の東憲太郎会長も「財政中立という意見もあるが、マイナス収支のままでは従事者の持続的な賃上げもはかることができない」と続けた。

(シルバー産業新聞2023年12月10日号)

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