ニュース

衣料から「衣療」へ グンゼ「メディキュア」の介護肌着

衣料から「衣療」へ グンゼ「メディキュア」の介護肌着

 肌をやさしく守る衣類で、病気やケガなどがあっても快適に過ごしてもらい、QOL(生活の質)を高めたい――。そんな願いを込めて、グンゼ(大阪市、廣地厚社長)は、病気やケガなどからの回復を目指す人や、肌のトラブルを抱える人のセルフケアをサポートする製品「メディキュア」シリーズを展開している。同社では、この思いに賛同する企業との連携も進めながら、医療・介護現場へ「衣療」によるQOL向上のアプローチを図っている。

セルフケアを支える 肌に優しい製品

QOL向上で社会貢献

 グンゼは明治の創業期から、質の高い製品の提供を通じて社会貢献を図ることを社是としている。同社は2014年に、今後の事業の柱となり得る新規事業の開拓を図る中で、人々のQOLの向上につながる新たな製品づくりを目指す方針を立てた。

 「リサーチを進める中で、病気やケガなどにより、手術後の痛みや肌の乾燥、むくみなど様々な悩みを抱える人たちがいることがわかった。当社の技術を活かし、これまで以上に肌に優しい製品を作れば、悩みを少しでも和らげ、快適に過ごしてもらえるのではと考えた」と、同社QOL研究所企画調査室室長の上島進さんは振り返る。

 立ち上げられた新ブランド「メディキュア」は、「『衣料』から、肌と心に寄り添う『衣療』へ」をコンセプトに掲げ、同社独自の高い技術を活かして製品開発が進められた。

 現在は、「低刺激インナー」、抗がん剤治療中の人向け「サポートキャップ」、放射線治療を受けた首まわりを守る「ネックカバー」、乳がん手術後の創部の擦れによる痛みを防ぐ女性用インナー「前開きハーフトップ」、締め付けが少なく腹部外科手術後の創部保護などに向く「ハイウエストショーツ」などが揃う。

肌に優しい「やわらか素材」

 「低刺激インナー」など向けに、綿100%よりもやわらかく蒸れにくい、レーヨン50%、綿40%、ポリウレタン10%の素材を開発。綿と天然由来のレーヨンだけが肌にふれるよう特殊な編み加工を施し、同時に特殊な接着剤で生地をつないで完全無縫製として縫い目をなくし、肌への刺激を最大限に抑えた。洗濯した際の汚れ落ちも良く、保湿剤なども安心して使える。

 大阪大学と大阪市立大学は、この素材を用いたインナーウェアを乾燥性皮膚疾患のある患者を対象に臨床試験を行い、肌の乾燥によるかゆみや痛み、皮膚病変が軽快し、患者の日常生活の満足度が高まったという論文をまとめた。

独自の「カットオフ素材」と「編み技術」

 大腸の手術後で人工肛門を造設した人向けに、アルケア(東京都墨田区、鈴木輝重社長)を通じて「やわらかウエストチューブ」の販売も始めた。ストーマ装具の装着位置や必要な長さに合わせて、カットして使用できる。同じく筒状の「アーム・レッグカバー」は、摩擦やずれで皮膚にできる裂傷(スキンテア)を予防・保護するため、腕や脚に合わせてカットしたり切れ目を入れられる。いずれもハサミで切ってもほつれにくい生地で、患部に合わせて自由にアレンジできる。

 排せつの自立を支える「尿取りパッド対応ボクサーブリーフ」は、500㏄程度の尿を吸ったパッドでもずれにくい立体成型。これを実現するため、部位によって編み目を変えて異なる伸縮性を持たせた。また「サポートキャップ」では、本体生地とバンド部分のつなぎ目をなくし、抗がん剤治療による脱毛がある頭皮に優しい素材とした。

 「今後は、医療・介護の領域でケア用品の開発・販売などに携わる企業と連携を進め、メディキュアシリーズ製品を、必要とする方々のもとへ的確に届けていく。病気からの回復や生活の自立を目指す方々に対し、QOLを高める製品を通じてセルフケアをサポートする『衣療』の普及と定着を図っていきたい」と上島さんは期待を込めた。
グンゼ QOL研究所 企画調査室室長 上島進さん

グンゼ QOL研究所 企画調査室室長 上島進さん

個別ケア基本にスキンテア 対策と排せつケアの質 向上へ

 堺市の特別養護老人ホームグリーンハウス(社会福祉法人桜会、阪本健施設長)は、閑静な住宅街の中に建つ全室個室のユニット型特養(入所80人、ショート8人)。入所利用者の平均要介護度は3.9で推移。開設当初から利用者一人ひとりに合わせた個別ケアを実践し、日本ユニットケア推進センターのユニットリーダー研修の実地研修施設にも指定されている。

 同施設では、個別ケアの質をより高いレベルで標準化させようと、昨年から他の特養と合同で研修会を開催している。堺市老人福祉施設部会の取り組みで、テーマは大人用紙おむつの基礎、排せつのメカニズム、スキンケア・スキンテア対策の3つを設定。講師には皮膚・排せつケア認定看護師やおむつメーカーのアドバイザーらを招いている。

 「おむつやパッドの選び方・あて方や、排せつケアのプロセス、自然排便につながる腸内環境の整え方、褥瘡を防ぐスキンケアなどを改めて学べた。特に、肌がただれている部分を守る軟膏の使い方、またそれを落とすための適切な陰部洗浄の方法なども参考になった」とユニットリーダーの高橋紀江さんは話す。

スキンテアを未然に防ぐ

 同施設では、腕や脚をベッド柵などにぶつけたり、移乗や清拭の際などの摩擦やズレなどが原因で皮膚表皮が剥離する「スキンテア」を防ぐための対策にも力を入れる。「例えば、腕を少し掴むだけで赤くなりやすいなど内出血が起こりやすい方や、血液の流れを良くする薬を服用している方は、スキンテアのリスクが高い。皮膚の状態観察を重点的に行うのはもちろん、アームウォーマーを着けて腕を守ったり、ドレッシング材を貼って内出血を防ぐなどの対策をとっている」とユニットリーダーの名迫千賀子さんは話す。

個々に合わせた排せつケア

 同施設では約3年前に、リブドゥコーポレーションの紙おむつを採用した。それをきっかけに、利用者のおむつや紙パンツのサイズ、尿取りパッドの吸収量などを見直した。「おむつは特にアウターのサイズが合っていないと尿モレの原因になる。そこで改めて個々の体格や尿量を計測し、適切なアウターとパッドを選定した」と名迫さんは振り返る。同時に、可能な人には排尿のタイミングを見計らって、トイレでの排せつへ誘導する対応も進め、排せつの生活動作・機能の維持に努めた。

 統括主任の中釜莉那さんは「介護度4前後のご利用者が大半で、現状では排せつの生活機能が大きく改善する可能性のある人がおらず、排せつ支援加算の算定は難しい状況だ。しかし、今後機会があればいつでも加算算定できるよう、個々の排せつ機能に合わせたケアを継続していきたい」と語った。

 今後、利用者一人ひとりのQOL向上へ、個別ケアを推進していく。
左からユニットリーダーの名迫千賀子さん、高橋紀江さん、統括主任の中釜莉那さん

左からユニットリーダーの名迫千賀子さん、高橋紀江さん、統括主任の中釜莉那さん

「QOL向上」へ 医療・介護系企業と連携

 グンゼでは、メディキュアシリーズを必要とする人たちのもとへ届けようと、病院の売店や、医療系ディーラーのショールームなどで商品を展示・販売するほか、医療・介護系製品の開発・販売ノウハウを持つ企業との連携にも取り組んでいる。

 抗がん剤治療などによる脱毛がある人向けに、医療用ウィッグを販売するアデランス(東京都新宿区、津村佳宏社長)は、全国の病院内で直営のヘアサロンを運営している。その一部店舗で、17年9月からメディキュアシリーズ商品が販売されている。

 また創傷ケア用品などを製造・販売するアルケアは、今年1月からメディキュアの「カッティングチューブ」を、オストメイト向けサポーター「やわらかウエストチューブ」として販売している。両社とも、グンゼとQOL向上というテーマを共有し、連携に取り組んでいる。

排せつ自立目指すケアを支援

 さらに1月からは、大人用紙おむつメーカーのリブドゥコーポレーション(大阪市、久住孝雄社長)が、同社の病院・介護施設向けアドバイザー「リフレ・サポーター」を介して、メディキュアの「アーム・レッグカバー」と「尿取りパッド対応ボクサーブリーフ」の販売に取り組んでいる。

 リブドゥコーポレーションは、患者・利用者一人ひとりのADLや尿量に対応できるよう、豊富な商品ラインナップのアウター(テープ止めおむつ、パンツタイプおむつ)やインナー(尿取りパッド)を取り揃えている。同社のリフレ・サポーターは、現場が様々なアイテムを適切に選び活用することを支援し、快適性向上や排せつ機能の回復、業務改善など、排せつケアの質向上へ向けた提案を行っている。

 マーケティング部門次長の鍵尾幸司氏は「寝たきりの方から立位がとれる方まで、多様な排せつケアに対応できるよう幅広く商品を揃える中で、最近では軽いはき心地やフィット感にこだわった製品も展開している。ご本人の残存能力を最大限活かし、排せつの自立を目指すケアを支援していく中で、グンゼの目指す『QOL向上』は、当社の思いと一致する」と語る。

 「介護保険に排せつ支援加算が位置づけられ、現場では可能な限り『おむつ外し』を志向するような流れも出てきた。今はプロセス評価の同加算だが、今後アウトカム評価に見直される可能性もある。その中で、排せつが自立に近い段階で使えるアウターとして、『尿取りパッド対応ボクサーブリーフ』を当社ラインナップと合わせて提供したいと考えた」と経営企画部門課長の西山雅之氏は話す。

 紙おむつ営業部門課長の才田要氏は「メディキュア商品を取り扱うにあたり、全国の営業所で説明会を開いて、リフレ・サポーターに商品の周知を図った。その後施設へ商品を案内すると、現場から好意的な反応が多く寄せられた」と語る。「現場ではスキンテア対策への意識も強く、『アーム・レッグカバー』への関心も高い。介護現場に対し、排せつケアの質向上はもちろん、より幅広くQOL向上に役立つ提案をしていきたい」と話す。
左からリブドゥコーポレーションの鍵尾幸司氏、才田要氏、西山雅之氏

左からリブドゥコーポレーションの鍵尾幸司氏、才田要氏、西山雅之氏

【商品紹介】メディキュア 「アーム・レッグカバー」 「尿取りパッド対応ボクサーブリーフ」

 「アーム・レッグカバー」は、スキンテアのリスクがある人や保湿剤を塗った腕や脚の保護、筒状包帯の代用品などに使える。生地のどこを切ってもほつれにくく、ハサミで長さを調整したり指を通す穴を開けるなど、自由にアレンジ可能。吸放湿性に優れ、皮脂汚れや洗剤の残り成分などが落ちやすい加工を施した。

 男女兼用で、サイズはM(腕)、L(脚)、LL(大腿部)。長さはいずれも43.5cm。色はオフホワイトとブラック。2枚セットで価格は1,500 円(税抜)。

 「尿取りパッド対応ボクサーブリーフ」は、尿を吸収した尿取りパッドをしっかりホールドする布下着。部位ごとに生地の伸び方を変えて編み上げることで、パッドの重みやふくらみを支え、ズレ下がりを防ぐ。

 200cc程度の尿もれ・軽失禁用パッドから、500cc程度の吸水パッドまで装着可能。色はネービーブルーとグレー。サイズはM(ウエスト76~84cm)とL(同84~94cm)。価格は2,000 円(税抜)。

 上記2商品の介護事業所・施設からの問合せは、リブドゥコーポレーション(電話06-6227-1360)まで。

(シルバー産業新聞2019年4月10日号)

関連する記事

2024年度改定速報バナー
web展示会 こちらで好評開催中! シルバー産業新聞 電子版 シルバー産業新聞 お申込みはこちら

お知らせ

もっと見る

週間ランキング

おすすめ記事

人気のジャンル