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厚労省 要介護認定の判定基礎データに在宅・通所反映へ

厚労省 要介護認定の判定基礎データに在宅・通所反映へ

 要介護認定の一次判定プログラムに在宅・通所、環境要因、認知症周辺症状を反映させる。6月2日開催の第121回社会保障審議会介護保険部会で、一次判定プログラムを見直し、基礎となっている現状の施設入所者データに加えて、タイムスタディを実施し得られた在宅・通所データを組込む方針が示された。介護の手間をより正確に評価し、判定の妥当性の向上を図り、27年度の実施をめざす。

 現状の一次判定プログラムは、2006年に実施した施設データを土台にしており、在宅・通所、BPSD(認知症周辺症状)等が十分反映されていない。25年12月~26年2月に在宅・通所サービス利用者を対象に新たにタイムスタディを実施し、利用者の心身状況や環境などによって介護時間を測定する予定。調査票は施設調査(06年度実施)のケアコードを踏襲して比較可能性を確保する。26年3月に結果をまとめ、26年4月以降に結果を部会に報告し、必要な見直し案を検討するとした。09年度見直し時に現場が混乱したため、十分な準備期間、関係者との協議、段階的導入を図るとしている。

 委員からは▽認知症BPSDや見守り・声かけなど「見えない手間」が反映されていない▽身体ADLと認知機能は必ずしも連動せず、在宅実態を加味すべき▽在宅は同居・住宅形態・サービス構成で介護時間が大きくぶれる。対象抽出・サンプル数を慎重に▽医療と介護で評価言語が違う。共通指標・共通データ形式を作り、将来的なDXと連動を▽認定ロジック改変が自治体格差を広げないように配慮――など賛同あるいは懸念が示された。

 また、「今後は、手間や時間だけでなく、センサーデータ等も活用する議論が必要」と、根本的な見直しを求める意見もあった。

 これまでも、01年度、06年度に在宅介護を対象とした高齢者介護実態調査が実施されたが、平均的なケア時間の算出が困難であったり、データの精度に課題があり、一次判定への反映がされなかった経緯がある。それ以降、大規模な調査は実施されていない。

認定の「迅速化」「デジタル化」「科学的妥当性向上」

 昨年6月の政府「規制改革実施計画」において、「デジタル、AI等を活用した要介護認定の迅速化」が掲げられてきた。

 一次判定プログラムの見直しのほか、要介護認定の見直しについて、つぎの諸点が確認された。

①迅速化と透明性
 申請~認定までの所要日数を毎年、全国・都道府県・保険者別に公表。調査・審査各段階で「目安期間」を設定。手続きの遅れを可視化し自治体間格差を縮小する。

②審査会の簡素化・AI活用
 簡素化適用対象を拡大し事務負担を軽減、介護認定審査会でAIを使うモデル事業を実施、26年度に結論を得て実装する。

③主治医意見書の提出タイミング見直し
 申請者自身が事前に主治医意見書を入手し提出する方式を検討。26年度に結論。書類不足による再照会を防ぎリードタイムを短縮する。

④がん等・急変時の特例迅速化
 医師診断書で即時認定する枠組みを検討。サービス開始の待ちを解消し在宅療養を支援する。

⑤徹底したデジタル化
 主治医意見書の電子提出、審査会のオンライン開催・ペーパーレス化、地方自治体システム標準化の進捗を公表する。業務効率化と標準化で自治体間ギャップを縮小する。

⑥AI研究の推進
 25年度より調査研究を開始する。エビデンスに基づくAI活用で判定根拠を強化する。

(シルバー産業新聞2025年7月10日号)

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