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コロナ禍の生活再建を支える「生活困窮者レスキュー事業」

コロナ禍の生活再建を支える「生活困窮者レスキュー事業」

 大阪府は、生活保護受給者が東京都に次いで全国で2番目に多い27万人で、人口に対する受給率は3.1%(東京都は2.0%)と全国で最も高い。長引く不況やコロナ禍などで、日々の生活苦にあえぐ人たちが増える中、大阪府では、社会福祉法人が生活困窮者支援の取り組みに力を入れている。

 大阪府社会福祉協議会と会員の社会福祉法人・福祉施設では、孤立や孤独死、ひきこもり、虐待生活困窮など、既存の制度では対応が難しい課題を抱える人たちを支援しようと、「大阪しあわせネットワーク」の名称で地域貢献活動を展開している。

 その中の「生活困窮者レスキュー事業」は2004年に始まった。「今日・明日、食べるものがない」「電気・ガスが止まってしまった」「家賃が払えない」など、失業や介護、障がい、虐待・DVなど様々な要因から生活困窮に至った人を支援する相談事業だ。

 支援が必要な人に対し、コミュニティソーシャルワーカー(CSW)らが訪問して状況を把握、生活保護や介護保険、生活福祉資金貸付など各種制度やサービスにつないで生活の安定を図る。緊急を要する場合は、食料や住まいを提供するなど経済的援助(現物給付で10万円まで)も行う。運営には、社福法人や各施設が基金を拠出し必要な財源をまかなっている。

 府社協が、16年度から19年度まで4年間の援助ケース2633件(相談件数約1.6万件)を分析したところ、相談者は単身者(全体の42.7%)が最も多く、次いで高齢世帯(30.0%)、母子家庭(19.1%)などの順に多かった。生活困窮の原因は、経済状態(94.0%)が最も多く、病気や障がいなど(52.0%)、失業など(47.4%)などの順に多かった。最近は、単身者からの相談、失業が原因の困窮が増えているという。

次のステップまでの間を支援

 大阪府南部で3カ所の特養などを運営する、社福法人みささぎ会(藤井寺市、奥田赳視理事長、写真中央)は、事業初年度の04年から生活困窮者レスキューに取り組んでいる。

 同法人は、支援が必要な人をいち早く発見できるよう、藤井寺市や市社協、地域包括支援センターなどの関係機関と連携をとり、アンテナを張っている。20年度は30件の相談が寄せられ22件を支援、21年度は18件の相談ケースがあり、11件で支援にあたった。

 同法人次長でソーシャルワーカーの渕本直志さん(写真右)は「コロナ禍以降、職を失った人の相談が増えた。特に一人暮らしの人は横のつながりが薄く、ぎりぎりの状態にまで追い込まれてから、相談に来る人も少なくない」と話す。市社協に、新型コロナで減収となった人向けの生活福祉資金特例貸付の相談で訪れた人が、窓口にある同法人のレスキュー事業の案内を見て、連絡してくるケースが多いという。

 同法人理事の山下幸宏さん(写真左)は「以前よりも、働き盛りの世代を中心に、相談に来る人の年代が若くなった印象だ。仕事さえあれば、また元のように社会復帰できるケースもあるが、困窮状態に陥ると思考が悪循環に陥る人も少なくない。少しでも前を向き立ち上がれるよう支援に努めている」と話す。

一時的な住まいも提供

 同法人では、15年から「無料低額宿泊事業」を行っている。法人の特養施設のそばにある一軒家を「尽心庵」と名付け、家賃が払えず住まいを失ったなど緊急性の高い人を受け入れ、生活再建や社会復帰までの間、CSWが関わりながら生活支援や就労支援などを行う。開設した15年7月から21年3月末までの間に、のべ37件の入所があり支援が行われた。

 尽心庵には5つの居室と共同のキッチンやトイレ、浴室があり、部屋には生活に必要な備品が備えられWi-Fiも利用できる。光熱水費などを含む利用料は原則月3万円だが、経済的な問題があったり、課題解決のため必要な場合は、利用料の一部または全額を免除する。
 ここでは、▽生活保護や特例貸付などの制度につながるまでの間▽ハローワークで一緒に仕事を探したり、法人の介護施設で清掃の就労訓練を重ねるなど、就職先を見つけるまでの間――など、次のステップに進むまでの一時的な居場所として、様々な人たちを支援している。

 奥田理事長は「コロナ禍で、派遣社員やフリーランス、個人事業主、シングルマザーなどの困窮ケースが増えている。また支援に入ると、就労や住まいの問題以外にも、介護や疾病を抱えていたりなど、他の様々な生活課題が表面化することも少なくない。例えば、法人の施設でアルバイトとして間接介護業務にあたってもらい就労機会をつくるなど、社福法人ならではの、柔軟な取り組みができることも強みだ」と話す。

(シルバー産業新聞2022年2月10日号)

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