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年金給付水準、今年度より2割減  年金財政検証

年金給付水準、今年度より2割減  年金財政検証

 厚生労働省は公的年金財政の見通しを示した「財政検証」の結果を公表した。経済や人口に一定の前提を置き、年金財政への影響や給付水準の変化を計算する。

 厚生労働省は8月27日、公的年金財政の見通しを示した「財政検証」の結果を公表、厚労相が社会保障審議会の年金部会に示した。財政検証は5年に1度実施する公的年金の健全性を点検する「定期健診」。経済や人口に一定の前提を置き、年金財政への影響や給付水準の変化を計算する。今回は経済成長と女性や高齢者の労働参加の進み具合に応じて、I~Ⅵの6ケースを想定してモデル世帯の年金の給付水準の変化を100年後の2115年まで試算した。

 モデル世帯は「現役時代に平均的な収入を得た会社員の夫と専業主婦の妻」の世帯で、今年度の年金額は月22万円(夫婦の基礎年金13万円+夫の厚生年金9万円)。現役男性の平均手取り収入額は月35万7000円で、所得代替率は61.7%(22万円÷35万7,000円)になる。

 この所得代替率が、今回の見直しで経済成長と労働参加が進むケースⅠ~Ⅲでは、約30年後には51.9%~50.8%と現状より2割低下する。

 約30~40年後までの経済成長率によって想定したケースごとにみると、成長率が最も高い0.9%(ケースⅠ)で所得代替率が51.9%、同じく0.6%(ケースⅡ)で51.6%、0.4%(ケースⅢ)で50.8%だが、0.2%(ケースⅣ)で46.5%、0.0%(ケースⅤ)で44.5%、▲0.5%(ケースⅥ)では保険料と国庫負担で賄うことのできる給付水準は38~36%程度になる(表はケースごとの所得代替率)。いずれのケースでも所得代替率は低下していくが、「ケースⅢ」では、50.8%と、前回2014年の財政検証の50.6%から、わずかに上昇しており、厚労省では出生率の改善と女性や高齢者の労働参加が進んだ影響と分析している。

 専門家の中には、「ケースⅠ~Ⅳ」は経済動向の予測などは楽観的で、「ケースⅤ・Ⅵ」が現実的という意見がある。現在20歳の若者が今年65歳の人と同じ水準の年金を受け取るには、68歳9カ月まで働いて保険料を納め、年金をもらい始める年齢も同様に遅らせる必要があるとされる。今年65歳になる高齢者と比べて働く期間は8年9カ月長くなるが、所得代替率は61.7%に上がって現状程度になる。

 公的年金には、主に自営業者が入る国民年金と、主にサラリーマンが入る厚生年金がある。国民年金の保険料は月1万6410円。40年納めた人の満額受給額は月6万5008円、実際の平均受給額は約5万円。厚生年金の保険料は、収入によって異なり本人の負担は月8000円~5万7000円。平均受給額は約15万円。

 公的年金の受給開始年齢は65歳が基準で、60~70歳の間で選べる仕組み。開始年齢を1カ月遅らせると、毎月の年金額は0.7%増える。今年40歳の人は67歳2カ月まで働き、それまで年金の受け取りも遅らせれば、今の65歳と同じ年金水準になる。

 2004年に年金制度の抜本改革が行われ、現役世代の保険料負担の増加と引退世代の年金給付抑制の仕組みとして、年金額の伸びを賃金や物価の伸びより抑える「マクロ経済スライド」が導入された。だが、保険料の引き上げは進んだものの、デフレなどを理由に「マクロ経済スライド」の発動は2回に留まっている。厚労省は今回の財政検証を踏まえ、年末までに年金改革の具体案をまとめる方針。5年前の財政検証は6月発表だったが、今回は参院選があり2カ月延びた。

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