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生涯現役「働くリハ」 介護付きホーム研究サミットでグランプリ

生涯現役「働くリハ」 介護付きホーム研究サミットでグランプリ

 全国介護付きホーム協会(鷲見隆充代表理事)は10月27日、「介護付きホーム研究サミット2025 第13回事例研究発表全国大会」を開催した。全87事例の頂点となるグランプリには、サンライフ小野谷(福井県越前市)による「100歳も現役“働くリハ”が入居者を変え、介護職を救う ~60歳非専門職が支える66カ月の成果~」が選ばれた。この取り組みは、平均年齢90.7歳という超高齢の入居者が「働くリハビリテーション」を通じ、心身機能の維持と介護職の負担軽減という二重の効果を66カ月間かけて実証したもので、その持続的な成果が審査員から高い評価を得た。

平日の午後は食堂が「職場」に

 同施設では、コロナ禍でレクリエーションやイベントの開催が激減し、見守りや個別ケアへ振り向ける時間が増大し、常勤介護職員の負担が増していた。こうした背景から、19年12月より、地場産業である越前打ち刃物の箱折り作業を受注した。

 平日の午後2時、入居者は「職場」である食堂へ自然と集まる。この活動は66カ月間で延べ900名以上が参加し、総箱折り枚数は42万枚、活動費として58万円を生み出した。入居者が得る報酬は、孫へのプレゼントや子ども食堂・児童施設への寄付に充てられるなど、社会的な循環も生み出している。

 入居者の心身機能維持にも効果がみられた。5年間継続している4人のうち3人は、要介護度、ADL、HDSR(長谷川式認知症スケール)のいずれかで機能が維持・改善。他のレクリエーションに不参加でこもりがちだった100歳の男性は、働くリハには5年間で372日も「出勤」し、生涯現役を体現している。106歳の女性は、福井駅の土産物店で自身が折った郷土料理「へしこ」の箱を見つけ、「私の仕事が並んでいる」と喜ぶなど、社会参加の実感にもつながっている。

60歳未経験職員がタスクシフトを牽引

 取り組みのもう一つの柱は、介護職員の負担軽減だ。箱折り作業がある日は、職員がレクや見守り業務から解放され、その時間を個別ケア、QOL向上、家族調整といった、より専門性の高いケアに専念できるようになった。このスキームを実現させたのが、発表者の佐藤辰明さん(60・写真)。5年前に無資格・未経験で生活支援員として入職し、発注から納品までの全工程をマニュアル化。60歳以上の職員が3割超を占める同施設で、現場の業務負担軽減を実現した。この活動を契機に、居室清掃などの業務もタスクシフトを推進。結果として、介護職全体の負担が軽減され、施設の離職率は13.6%(20年)から4.5%(24年)へと大きく改善した。

 審査を務めた同協会の山本武博常任理事は、同施設の取組みについて「地域社会とつながる循環型の支援モデルとして全国の施設にヒントを与える」と指摘し、「介護現場の再設計と人材活用の新たな方向性を示すもの」と高く評価した。

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