インタビュー・座談会

エビデンスベースの福祉用具ガイドライン策定へ

エビデンスベースの福祉用具ガイドライン策定へ

 ガイドライン「介護保険における福祉用具の選定の判断基準」の見直しに向けて、今年度の厚生労働省の老人保健健康増進等事業「介護保険における福祉用具の選定の判断基準の見直しに向けた調査研究事業」(実施主体=エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所)が行われている。同事業の渡邉一委員長に現状を聞いた。

 ――ガイドライン策定の進捗状況は。

 本部会1回と作業部会1回が終了した。現在はデータの解析・分析をしている。今年度末までに報告書をまとめる。その内容を基に厚生労働省からガイドライン(技術的助言)として発出されることになるのだろう。

 ――策定に向けた手順はどうか。

 10月30日に取りまとめた「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」では、ガイドラインの方向性について▽05年度以降に新たに給付対象となった福祉用具に関する記載の追加▽医師やリハビリ専門職等の医療職を含めた多職種連携の促進や適正な給付の観点を踏まえた内容の見直し▽例外的な給付を行う場合の留意事項の例示▽福祉用具の選定等における妥当性の判断に資する情報――などとされている。

 たとえば、04年以降に給付対象となった自動排泄処理装置、排泄予測支援機器、また、バリエーションが増えて給付が急速に増えた手すり等についても、最新のものに更新することを進めている。ほかにも、06年10月以降は、要介護1までの軽度者に介護ベッドや車いすなどを原則給付しないこととなったが、同時に例外給付も認められることとなったため、「例外」について書き込む必要があると考えている。

 また、ガイドラインの狙いについては、自治体職員を含む幅広い関係者で共有できる内容となるよう見直しを行うとされており「その際、実際の利用事例等を検証・精査するとともに、有識者による検討会での議論等を行い、現在の給付における特徴や課題を整理する」とされたことから「介護保険における福祉用具の選定の判断基準の見直しに向けた調査研究事業」(23年度老人保健健康増進等事業/NTTデータ経営研究所)が行われており、その委員長となった経緯がある。

 ――ガイドラインの内容次第で給付抑制になるのでないか。

 科学的に立証された内容を書き込むため、意図的な内容を書き込む余地はないと考える。現行のガイドライン策定と同様にデータに基づきエビデンスベースで進めている。

 具体的には現行のガイドライン以降(05年以降)の研究データや事例を分析・解析した内容に基づく科学的な方法で進めている。これまでに、データベースを活用して、国内の論文や発表などの文献検索を実施し、エビデンスレベルごとに内容を検討している。あまり古いものは役に立たないため、おおむね5年以内のものに絞った。

 事故事例や給付条件(想定外の理由でレンタルを入れた事例)などとともに解析している。事故に関してはハンドル型電動車いす(電動カート)事故が課題となっていることから、根拠に基づいて書き込む必要があると考えている。

「介護保険における福祉用具の選定の判断基準」(福祉用具ガイドライン)

 「要介護度の軽い者への特殊寝台・車いすなどの貸与が、利用者の状態像から必要性が想定しにくい給付があり、自立支援の趣旨にそぐわない事例も見受けられる」として、2004年に厚生労働省が発出した技術的指導。

 当時の福祉用具貸与種目のそれぞれについて「福祉用具の特性」「使用が想定しにくい状態像(認定調査項目などに基づく)」「使用が想定しにくい要介護度」を示している。また、給付が画一的にならないように、各種目に「個別の利用者の生活状況や解決すべき課題等によっては、使用が考えられる場合もある」と注釈している。一方で「手すり」「スロープ」「歩行器」「歩行補助つえ」の4種目は、想定しにくい状態像・介護度とも「特になし」としたことから、軽度者の貸与が大きく伸びた経緯がある。

(シルバー産業新聞2023年11月10日号)

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