コラム

《福祉用具で解決!介護の困りごと》多種多様なおむつ、状態に 合わせた選択で安心を/排泄支援(浜田きよ子さん)

《福祉用具で解決!介護の困りごと》多種多様なおむつ、状態に 合わせた選択で安心を/排泄支援(浜田きよ子さん)

 排泄用具の情報館むつき庵 では 排泄用具を800点ほど展示して、排泄トラブルの相談を受けています。800点と言ってもおむつ類だけでおよそ400点あり、そのなかには下着に貼って使う小さな尿パッドもたくさんあります。

 相談に来られた方の多くは棚に並んだおむつを見て「おむつってこんなにあるのですね」と驚かれます。おむつというと誰もが「使いたくない」と思うものですが、実際にさまざまなおむつ類を見たり、手に取ったりすると、「これがあれば安心できる」という方が少なくありません。

吸収体をしっかりと当てるように

 私が相談を受けた男性は前立腺肥大症の手術をした方で、尿漏れがあるため昼も夜もパンツ型紙おむつを履いています。それでも朝にはパジャマまで濡れていることがあり、昼間も時々尿が漏れてズボンを濡らすことがあるそうです。夜は安眠できないし、不安で外にも行けないと言われます。寝ているときの姿勢やおむつの履き方などを伺いながら、私はパンツ型紙おむつの吸収体が股間にしっかり当たるように履けていないことに気付きました。そこでおむつの吸収体を意識して履くように伝えて、実際にその場で彼に行ってもらうと「全然違うわ」と喜んでくださいました。そのうえで昼間の尿漏れの量を測ってみて少量なら、下着に貼るだけの尿パッドで済むのではないかとお話ししました。

 後日、その男性から連絡がありました。パンツ型紙おむつからの夜間の尿漏れが無くなり、安眠できるようになったこと、昼間は失禁量が少ないことが分かったので、サンプルで渡した尿パッドを下着に貼って外出していると話してくださいました。彼は「おむつのおかげで安心できる。でも何をどう使っていいのか、正直なところよく分かっていなかった」と言われました。おむつ類は使う人の状態によって選択し、適切な当て方をすることが大切です。でもまだまだそれが知られていないと実感しています。

適切に使えば、安心と生活の拡大に繋がる

 私は長く特別養護老人ホームで事例検討を行ってきました。その中に夜間の尿漏れが無いのに、薄いパンツ型紙おむつを履いて寝たいと言われる90才の女性がいました。聞けば「これを履いといたら安心や。そやからぐっすり眠れる」と言われます。高齢になると尿漏れの不安はあるものです。そんなときに薄いパンツ型紙おむつ一枚で安眠できるなら、それを悪いとは言えません。思えば軽失禁パッドを差し上げた方から、「これでバス旅行も安心やわ」と言われたことがあります。

 おむつは使わないほうがよいと思われているモノかもしれません。ただ今回の例のように、おむつが安心をもたらし生活を広げる場合も少なくありません。

 おむつがよいとか悪いとかではなく、その方の状態を丁寧に把握すること、そこから本当に必要かどうかを判断していくことが大切です。
はまだ きよこ
排泄用具の情報館「むつき庵」所長
親の介護をきっかけに、介護や福祉用具について研究。1995 年に介護の相談所「高齢生活研究所」を設立。代表を務める排泄用具の情報館「むつき庵」の活動は、2013 年度に「グッドデザイン賞」を受賞。主な著書に、最新刊「おむつと排泄の看護ケア」(メディカ出版)など多数。
(福祉用具の日しんぶん2022年10月1日号)

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