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在宅生活を支えるケアマネジャー/入野 豊 さん 【在宅のスペシャリスト 1】

在宅生活を支えるケアマネジャー/入野 豊 さん 【在宅のスペシャリスト 1】

 厚労省の調査によると、要介護・支援の認定者数は現在、651.2万人。このうち半分以上の371.2万人が、介護保険の「居宅サービス」を利用しています。別の調査では、年をとってから「自宅」で生活したいと考える人は72.2%もいました。こうした「自宅で暮らしたい」という思いを叶えるには、どのような助けが必要でしょうか? 在宅生活を支える【医療・介護のスペシャリストたち】を紹介します。

■入野 豊 さん(59)

 大森山王居宅介護支援事業所(東京都大田区) ケアマネジャー歴18年

「本音を聞けたときは感無量」

①ケアマネジャーになった理由は?

 大学卒業後、そのまま就職することに疑問を感じ、4年をかけて日本全国、東南アジア諸国を気の向くままにふらふらと旅していました。帰国後は生活のために、トラック運転手などいくつかの職を経験したあと、障害者授産施設での指導員、グループホームの世話人といった福祉の世界に飛び込みました。
 その頃、介護保険制度のスタートに合わせて、ケアマネジャーという新たな職業ができることを知り、関心をもったのがきっかけです。周囲からも、人と向き合う仕事があっていると勧められ、2000年の試験に合格してケアマネジャーになりました。
 当時は周りを見渡しても「ケアマネ1 年生」ばかりです。誰も教えてくれる人がいない中、自分たちで利用者支援のあり方を懸命に探っていました。今は所長兼管理者の立場でもありますが、40人の利用者の方を担当して現場に出ています。

②仕事のやりがいは?

 利用者の方と向き合って、本音で話し、少しずつ関係性を深めていくプロセスですね。以前、担当した方に同居する姉妹3人全員が認知症を抱えているケースがありました。次女の方が比較的しっかりしていて、初めのうちは「私が姉と妹を守るから大丈夫」となかなか心を開いてくれませんでした。でも次第に家はゴミ屋敷になっていくし、3人の生活がとても心配でした。時間をかけて足を運ぶうち、誰にも姉妹に会わせようとしなかった次女がこちらの話を聞いてくれるようになり、訪問介護などの支援を少しずつ受け入れてくれるようになりました。だんだんと向こうからも本音を語ってくれるようになって、その時は感無量でしたね。一晩に数十回電話があった時にはさすがに少し戸惑いましたが(笑)。サービスの調整だけでなく、知り合いの弁護士に後見人になってもらったり、行政や地域の民生委員の方とも協力して支援を行いました。
 利用者の方との信頼関係は当然ですが、一朝一夕に築けるものではありません。時間がかかりますし、時間をかけても築けない場合だってあります。ただ利用者の方の本音が引き出せれば、よりその人らしい暮らしを支援することに繋げることができます。さまざまな人生経験を積まれた個性豊かな皆さんの生活を支えられるのがケアマネジャーの醍醐味です。
【入野さんの一日】
 9時    出社
  メール・FAXの確認
  利用者の訪問調整
  前日行った訪問記録の作成
 13時    利用者訪問
 17時    帰社後、ケアプラン作成やサービス事業者への連絡など
 20時    退社
※介護支援専門員(ケアマネジャー)とは
 要介護者の日常生活の困りごとをヒアリングし、自宅などでその人にあった適切なサービスの計画・調整を行うのがケアマネジャーの役割です。いざ介護が必要になっても、なかなか自分にあったサービスや事業所を選ぶのは容易ではありません。専門職の立場から、自分にあったサービスを提案してくれます。ケアマネジャーが作成するサービス計画をケアプランといいます。

(介護の日しんぶん2018年11月11日)

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