コラム

【福祉用具で解決! 介護の困りごと】スロープ・段差解消機/北島栄二さん

【福祉用具で解決! 介護の困りごと】スロープ・段差解消機/北島栄二さん

 日本家屋は地面からの湿気を防ぐため、住宅の床は地面より45cm以上高くするように建築基準法で決められています。そのため、車いすでは玄関の段差が越えられないという不都合が生じます。段差解消機を活用して家屋への出入りが可能になった事例を紹介します。

Aさんの事例

 Aさん(80代・女性)は、脳梗塞による左片麻痺が生じ、回復期病院でリハビリテーションを受けています。歩行が困難なため車いすを使用しており、移動の介助が欠かせません。長男夫婦と三人暮らしで、入院時より自宅復帰を希望しています。

 入院後の面談で自宅復帰が2カ月後に決まりました。そこでリハビリテーションを担当するセラピスト(作業療法士、理学療法士)は、Aさん宅の家屋調査を行いました。そして、段差があるため玄関から車いすの出入りができない、玄関横にAさんの寝室が位置するなど、家屋の状況を把握しました(写真1)。
 写真1 改修前のAさん宅、玄関に段差が…

 写真1 改修前のAさん宅、玄関に段差が…

段差解消機の活用の提案

 セラピストは、玄関の段差を車いすで越えることは、家族にとって大きな介護負担であると判断しました。そこで段差解消機を活用して寝室の掃き出し窓から家屋へ出入りする方法を考え、Aさんと家族へ提案しました。

 Aさんと家族は提案に同意し、段差解消機活用の検討が始まり、「段差解消機を設置するために寝室前の敷地を整地する」「段差解消機は介護保険の対象機種(※)」とすることが決まりました。

 工期が梅雨の時期にかかったため、コンクリート整地は予定よりも日数を要しましたが、希望通りの施工が行われました(写真2)。また、段差解消機の操作について、福祉用具貸与事業者とともに、家族への指導を行いました。こうして段差解消機の活用により、Aさんの自宅復帰が叶いました。
 写真2 段差解消機を設置。Aさんの自宅復帰が叶った

 写真2 段差解消機を設置。Aさんの自宅復帰が叶った

段差解消機活用のポイント

 段差解消機などの福祉用具を活用するにあたり、リハビリテーションを担当するセラピストに相談することは重要です。本人・家族の動作能力と家屋状況の評価を踏まえた的確なアドバイスが得られるからです。そのほか、段差解消機の活用における押さえておきたいポイントを整理します。

①設置する場所を家族も含めて協議する
②設置場所とアプローチまでの動線を整地する
③梅雨などの季節によっては工期が延びることに留意する
④介助者へ機器操作の指導をする
⑤設置場所によっては雨避けの工夫をする

※介護保険で福祉用具貸与の対象となるのは据え置き式段差解消機に限ります。埋め込み式は対象外です。

段差解消機以外の解決方法(簡易スロープ)

 工事を伴わず、折りたたみ収納が可能な簡易的なスロープです。敷地や家屋の状況によって選ばれますが、勾配が急になりますので、介助者の負担は大きくなりがちです。介助者の動作能力を評価したうえで活用を決定しましょう。


○事例情報・写真協力:社会医療法人春回会長崎北病院

北島栄二さん
 国際医療福祉大学福岡保健医療学部 作業療法学科 教授

(福祉用具の日しんぶん2018年10月1日号)

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