コラム

身近で頼もしい味方「福祉車両」 太田吉彦 【福祉用具の使い方】

身近で頼もしい味方「福祉車両」 太田吉彦 【福祉用具の使い方】

 「自分で運転できる」、「乗り降りがラクにできる」という二種類の「福祉車両」について太田吉彦さんにうかがいました。

 「福祉車両」と聞いて、どんな車を思い浮かべますか? 介護施設の大きな車?
 実は福祉車両と言っても、大きな車から軽自動車まで、また、車いすのまま乗車するための装置を備えた車やシートへの乗降を助ける簡便な機構が付いた車まで、様々なタイプがあります。
 また、電動車いすや低床バスなども福祉車両に分類されますが、ここでは乗用車をベースにした福祉車両についての疑問にお答えしていきましょう。

Q 「福祉車両」って普通の車とは違うのですか?

 乗用車をベースにした福祉車両は、高齢者やお身体の不自由な方のために、車への乗り降りや運転を容易にする機能を持った車両です。大きく分けると、お身体の不自由な方の介護や送迎に利用する「介護式」と、お身体の不自由な方が自分で運転するための「自操式」の2つになります。
 また、「介護式」には次の3つのタイプがあります。
 ①「回転(スライド・チルト)シート車」(図1):シートが外側に回転、または回転してスライド・チルトすることで、乗り降りがラクにできる車です。杖などを使ってご自分で歩くことができる方や車の乗り降りに不便を感じている方向けです。
 ②「昇降シート車」(図2):助手席または後席シートが、電動で回転、車外にせり出し、乗り降りしやすい位置まで下がる車です。乗り降りに不便を感じている方に加え、車いすにお乗りの方でも移乗ができればお使いいただけます。
 ③「車いす移動車」(図3):リフトやスロープが装備されていて、車いすに乗ったまま乗り降りができる車です。つねに車いすを使われる方やシートへの移乗が困難な方向けです。
 そして、「自操式」とは「運転補助装置付車」(図4)のことで、手、あるいは足だけで運転操作ができるものなど、障がいをお持ちの方がご自身で運転できるように補助装置を取り付けた車です。
(図1)回転(スライド・チルト)シート車

(図1)回転(スライド・チルト)シート車

(図2)昇降シート車

(図2)昇降シート車

(図3)車いす移動車(スロープタイプ)

(図3)車いす移動車(スロープタイプ)

(図4)運転補助装置付車

(図4)運転補助装置付車

Q どのように選べばいいですか?

  「自分で歩けるけれど乗り降りを楽にしたい」「車いすに乗っているけれど車ではシートに座りたい」「車いすのまま乗りたい」。または「身体が不自由だけれど自分で運転したい」といったように、福祉車両に求めるニーズを明確にしてタイプを絞っていきます。
 そして、福祉車両ならではのポイントは、介護される方の想いを尊重しながら、障がいの進行度合いや介護する方の年齢・体力、介護される方が乗り降りする時の駐車場の広さへの考慮などが必要なことです。一方、軽自動車から普通車まで、カタチもセダンからミニバンまでなど、様々な福祉車両があるので、普通の車選びと同様に、車を使われるご家族の構成や人数、用途も大切なポイントです。
 福祉車両について詳しい相談のできる自動車販売店も増えてきています。平日はおばあちゃんの送迎に使い、休日は「家族のクルマ」として使いたいなど、どの様に福祉車両を使うのか、ご家族のニーズにマッチした1台を選んで頂きたいと思います。

Q 福祉車両の最近のトレンドは?

 超高齢社会が進展する中、福祉行政は在宅介護・訪問医療を軸とした生活支援サービスへの移行を進めています。この方針により、ご家庭での福祉車両ニーズがますます高くなることを想定して、カーメーカーでは、一般のご家庭でも日常的にお使いいただける福祉車両を数多くご用意しています。また、先進のエコカー技術や安全装備を備えた福祉車両も多くなっています。
 日本自動車工業会では、お身体の不自由な方はもちろん、介助する方にとっても快適で安全な移動手段、豊かな生活を実現できるツールとして福祉車両を活用いただけるよう、ガイドを刊行しています。
日本自動車工業会 太田 吉彦 さん

日本自動車工業会 太田 吉彦 さん

同会 福祉車両部会副部会長
1980年ダイハツ工業に入社。開発、商品企画部門等を経て、11年から福祉車両の企画・開発に携わり、同時に自工会福祉車両部会の委員となる。15年に副部会長に就任。ダイハツ工業法人商品室主査


(福祉用具の日しんぶん2016年10月1日号)

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