連載《プリズム》

経営は大きくケアは小さく

経営は大きくケアは小さく

経営の安定をめざして、国は介護サービス事業所の経営の協働化や大規模化を掲げている。

 22年度介護事業経営概況調査などに基づいた規模別の収支状況では、通所介護、訪問介護、特養の3サービスの収支差率は、延べ利用者数が増加するに従って、拡大している。平均収支差率1・0%の通所介護の規模別収支差率は、延べ利用者数が300人未満では11・1%の赤字、300人~450人で3・1%の赤字、451~600人で0・9%の黒字に転換し、延べ利用者数が拡大するに従って黒字幅が増え、901人以上で4・1%になった。訪問介護、特養ともに同様の傾向を示している。また福祉医療機構のデータでは、主に介護保険事業を行う社会福祉法人の利益率は、拠点数が増えるほど利益率が高い

▼特養における常勤職員1人当たり給与費も、定員規模が大きいほど上昇している。定員30人未満では37・2万円だが、定員101人以上では40・8万円に上がる。一般に事業を集約する方が収入に対する支出の割合が下がり、経営効率が上がる。経営の大規模化は生産性向上に必要なアプローチだとわかる。介護人材不足がさらに加速する状況では、経営の大規模化をめざす必要がある

▼しかし、本来、介護のサービス規模は小さくして、介護職はより利用者と密接にサービスを行うのが基本とされる。本号7面の座談会においても、全国老施協の平石朗会長は、経営の大規模化には賛意を示しながら、介護の場で利用者と職員は話ができる環境をつくることが、よいケアにつながり、介護職のやりがいにつながると話している

▼24年改正で経営の見える化が進む。今後ますます、国や保険者らは、それぞれの経営を見て、必要な事業支援を行って地域の介護を守らなければならない。

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